謎多き「忍者」 技と知恵を学べば現代の暮らしに生かせるかも?

構えを披露するカイザーさん

記事 INDEX

  • 「争わないこと」
  • 情報が少ない…
  • 修行の体験も!

 黒ずくめで闇に潜み、人間離れした動きと技で敵を欺く――。そんなイメージで語られる忍者は、ミステリアスな魅力にあふれる。忍術を体験してその実態に迫れば、現代の暮らしに役立つ知恵も見つかりそうだ。

「争わないこと」

 福岡市中央区の福岡天神武神館道場は「忍術」を教えている。忍術といっても姿が消えたり屋根を走ったりといった超人技ではなく、ここでは素手や木の棒を使うなどして、最小限の動きと力で相手の攻撃から身を守る方法を学ぶ。


稽古で使用する木刀など


 忍者の重要な任務は情報収集で、「情報を無事に持ち帰るためにも、大切なのはむしろ『争わないこと』」と大師範のマシュー・カイザーさん(49)は説明する。そのため稽古の半分は、相手と円滑にコミュニケーションを取るための心得や、感情のコントロール法の習得などに充てられる。


カイザーさんの忍者コレクション


 カイザーさんはアメリカ出身で、アニメや雑誌を見て忍者に憧れ、1999年以降、千葉県の「武神館本部道場」で学んできた。昨年7月に福岡で道場を開き、これまでに約30人を指導した。稽古は1回2時間(3000円など)で、「忍術は心も体も鍛える。生活をレベルアップさせるのに役立ててほしい」と力を込めた。


advertisement

情報が少ない…

 忍者の愛好家や研究者らでつくる九州忍者保存協会の宮瀬昇次郎理事長(49)(福岡県直方市)によると、忍者は「しのび」と呼ばれ、敵方に紛れ込んでの偵察や敵の不利になるうわさを流すといったスパイ活動を行った。

 変装術や方言を身につけ、天体観測や薬学などにも精通していたとされる。任務の性質上、文献には残りにくかったものの、江戸時代に長崎で外国船の調査をしていたことを示す史料なども見つかっており、宮瀬さんは「実在したことは間違いないが、情報が少ないだけに小説や漫画、映画などで自由に描かれやすく、それも忍者を神秘的にしている」と説明する。

修行の体験も!

 熊本県氷川町のレジャー施設「火之国屋」ではアウトドアと忍者修業を組み合わせた体験を提供する。黒ずくめの衣装を着用し、手裏剣投げや吹き矢、火おこしなどがあり、夏の間は川で水を相手にぶつける攻撃術や水で壁を作って逃げる防御術を学べる。


忍者修行を体験できる「日之国屋」

手裏剣の投げ方を教える小斎さん(左)


 「忍頭」の小斎深夜さんは「忍者は自然を熟知していたはず。自然を利用する知恵を実感して」と勧める。体験は1人2000円などで、大人も子どもも楽しめる。


 福岡県朝倉市のカフェ「秋月歴思堂」は、秋月藩に残る忍者に関する古文書の複製や、同藩で忍者が使ったとされる武器の一部、忍術についての史料、手裏剣などを展示している。


忍術について説明する渡辺さん

朝倉市にある「秋月歴思堂」


 忍者の歴史調査を続けてきた店主の渡辺俊二さん(41)が「地域の子どもたちに伝えたい」と2013年に店を開き、希望に応じて忍者「月光疾風(はやて)」の姿で接客。手裏剣投げ(6投300円)の体験もできる。渡辺さんは「秋月の歴史の一つである忍者の知識を深めてほしい」と語った。


動画で情報発信


忍カルTVの一場面(ユーチューブより)

 福岡県内在住のユーチューバー「くノ一かがみ」さんは「忍者は実在したという事実を広く知ってほしい」と、2022年からユーチューブのチャンネル「忍カルTV」で、動画を週1本程度投稿している。
 捕縛術や手裏剣術、対人術、食事の解説などで、かがみさんは「忍者の能力は、現代の生活にも役立ちます」とほほえんだ。


 気になる情報やテーマをメールでお寄せください。


advertisement

この記事をシェアする