新たなカタチで「い草」の魅力を発信!アートやインテリアに
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記事 INDEX
- 端材で作品を描く
- 機能を生かす商品
- 香り広がるアイス
住環境の変化で畳の需要が減る中、畳や、原料となるい草の魅力を再認識してもらおうと、アートや日用品が生み出されている。
端材で作品を描く
「い草が持つ、力強さや生命力を表現しました」
福岡県朝倉市の「徳田畳襖(ふすま)店」には、徳田直弘さん(33)が手がけたキャンバスアートが飾られていた。畳の張り替え時に出るい草の端材を束ねてアクリル絵の具を付ける。それをキャンバスに、スタンプのように幾重にも押しつけて描いていく。
徳田さんは3代目幸生さん(68)の長男。歌手を目指して音楽スクールに通っていた。家業を知った恩師の「歌う畳屋さんになったら?」という一言をきっかけに、畳の歴史や良さなどを盛り込んだ曲「愛され畳」を作った。ライブで披露すると好感触を得て、「畳の良さをより広く伝えていきたい」と、2012年に家業を継ぐ決意をした。
幸生さんの下で修業を積みながら、訓練校に通って国家資格「一級畳製作技能士」を取得。新型コロナウイルス禍で音楽関係のイベントが次々と中止になった頃、「形に残る物を作りたい」とアートも手がけるように。現在は京都芸術大の通信制で学んでいる。
「アートが、フローリングの部屋でも『畳っていいよね』と話す“タタミケーション”のきっかけになれば。そして、畳やい草の良さを再認識してほしい」と願っている。9月22日には、福岡市で開かれるアートフェスタに出展する。
機能を生かす商品
福岡県い製品商工業協同組合(福岡県大木町)によると、県内では1500年代からい草の栽培が本格化し、それに伴い畳表などの生産・販売が広がった。近年も、い草の消臭機能や湿度調整機能などを生かしたユニークな商品が、次々と生まれている。
色鮮やかに染めたい草で織る「福岡花ござ」は県内の名産品で、2023年、地域ブランドを保護する「地域団体商標」に登録された。1947年創業の同県柳川市の「松正」は、花ござのインソール(1760円)を販売する。花ござを機械で織ってメーカーに卸す織元だが、代表の松永正晴さん(46)が「直接消費者に届けられ、気軽に手に取ってもらえるものを」と発案した。
22.5~29.5センチの1センチ刻みで販売し、赤や緑など全9色。2019年には市内産の優れた物品を登録する「柳川ブランド認定品」となった。松永さんは「ムシムシ、ベタベタする日本の気候にもってこい。まだ続く残暑をこれで乗り越えて」と呼びかける。
同県大木町の「イケヒコ・コーポレーション」は4年ほど前から、短いため廃棄されてきたい草を活用した「イルシコ(要る分だけ)みらい」シリーズを展開。い草の香りを楽しむインテリア商品「フレグラス」(1000円から)や枕(4000円)などを手がけてきた。
広報担当の阿部ひかりさんは「『もったいない』の気持ちを形にした。い草の香りに癒やされてほしい」と呼びかける。
香り広がるアイス
熊本県八代市でい草関連製品を企画する「イナダ」は、食べられるい草を使った「たたみアイス」(8個入り、3600円)を販売する。
原料は畳表用のい草だが、農薬や除草剤を使わずに自社で栽培する。乾燥後に粉末にしたものを練り込んでおり、藁(わら)床でできた畳をイメージし、い草ミルク味と玄米味の2層づくり。常務の稲田近善さん(50)は「い草が持つほのかな甘さと、優しい香りが広がります」と薦める。
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