打ってよし!味わってよし! 「年越しそば」に願いを込めて

福岡県内で楽しめる「年越しそば」

記事 INDEX

  • そば屋で手打ちに挑戦!
  • 福岡の公民館サークルで
  • 地域で楽しむ特別なそば

 「細く長く生きられますように」「厄を断ち切れますように」――。願いを込めて大みそかに食べる「年越しそば」は、博多発祥との言い伝えもある。自分で打って家族に振る舞ったり、地域の素材を味わったりと、楽しみ方も様々だ。

博多・承天寺が「発祥の地」
 福岡市博多区の承天寺は、「年越しそば発祥の地」と伝えられている。鎌倉時代、同寺を開いた聖一(しょういち)国師が修行先の中国・宋から水車による製粉技術を持ち帰り、うどんやそばの作り方を日本に広めたとされる。そして、寺の建立に力を貸した宋の商人が、飢餓の年の大みそかに博多の民衆にそばを振る舞ったことが「年越しそば」の始まりと言われているという。

そば屋で手打ちに挑戦!

 「肩の力を抜いて、指先で軽く混ぜていきます」

 福岡県糸島市のそば屋「そば打ち楽土」で、夫婦が店主の光武修務さん(58)から手ほどきを受けていた。


光武さん(右)から習いながらそばを切る中野さん夫婦

 あらかじめ水を含ませたそば粉を混ぜるところから始める。粉は、ソバの実を石臼でひいてふるいにかけ、香りが良くなるよう黒い殻付きの実も混ぜる。生地をまとめて丁寧に延ばし、切るところまで約1時間。その後、店内で打ちたてのそばをゆでてもらい、ざるそばで味わった。

 初めて挑戦した同市の中野実佐緒さん(65)は「均等に延ばすのが難しかった。麺の幅で違う食感が楽しめるのもおもしろい」と笑顔。夫の広貴さん(64)は「もっと上手になって、今年の年越しは自分が打ったそばを家族に振る舞いたい」と張り切っていた。


完成したそば。そばの実雑炊なども付いてくる

 光武さんは20年以上、趣味でのそば打ち経験があり、コロナ禍を機に早期退職して2022年秋に開業した。1人4500円(11歳以上)など。体験後の食事には、「そばの実雑炊」なども付く。

 12月29~31日限定で「新そば 年越しそば打ち体験」も。そば打ちのみで一人4000円(4人前)。光武さんは「自分で打ったそばでの年越しは格別です」とほほ笑んだ。

福岡の公民館サークルで

 調理経験が少なくても始めやすく、家族や近所に喜ばれることから、定年退職後の趣味としても人気だ。


生地を延ばす岡本さん


 福岡市の公民館サークル・長(なが)そばの会(藤島敏彦会長)は、市内5か所の公民館でそば打ち教室を開いている。現在は、60歳代以上を中心に約70人が月1~2回、学んでいる。

 名誉会長の岡本忠さん(91)が08年に発足させた。その日の温度や湿度でそば粉に加える水の量も体感で覚える必要があり、「職人的な要素が大きい奥深さに引きつけられる」そうだ。生きがいづくりにもつながっている。


打ち立てのそばを食べる会員ら

 毎年、年末には約200人分の年越しそばを打ち、全国の親族や友人に送るという岡本さん。「そば打ちは、人とのつながりを生んでくれる」と魅力を語る。

地域で楽しむ特別なそば

 同県八女市の牛島製茶は、乾麺「八女茶の茶そば」を販売している。自社工場で茶葉をひき、鮮度が高い状態でそばに練り込んでいる。一般的な茶そばよりも抹茶の量を増やして、色みや香り、味を際立たせるよう工夫しており、担当者は「大地の恵みを味わって」と語る。


八女茶を用いた茶そば(牛島製茶提供)

 八女商工会議所などが新たな特産品として企画し、2024年1月に販売開始。製麺は同県うきは市の企業が手掛け、240グラム(3人前)で税込み864円。年越しそばや新年の贈り物にもお薦めという。


「資さんうどん」のかけそば(1人前)のイメージ(資さんうどん提供)


 北九州のソウルフードと親しまれる「資(すけ)さんうどん」では、年越しそばの予約を受け付けている。滑らかな食感と適度なコシも楽しめるという「二八そば」(2人前880円から)で、つゆやとろろ昆布などが付く。

 担当者は「1年の厄災を断ち切り、素晴らしい新年になるよう願いを込めて食べる縁起物。『年越しそば』を食べて幸せいっぱいの新年を迎えてほしい」と呼びかける。

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