恐竜だけじゃない! 北九州「いのちのたび博物館」の魅力を再発見

記事 INDEX

  • 正式名称は「自然史・歴史博物館」
  • 恐竜の時代から身近な自然環境まで
  • 北九州の歩み、ドラマがここに!

 迫力ある恐竜の展示で知られる北九州市八幡東区の「いのちのたび博物館」。「いのちのたび博物館=恐竜博物館」と思っている人も多いようですが、正式名称は「北九州市立自然史・歴史博物館」。46億年前の地球誕生から現在に至る自然と人間の歩みをテーマにした、西日本最大規模の施設です。今回は、恐竜のほかにも数ある見どころの中から、迷いに迷いながら選んだポイントを紹介します。


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恐竜から身近な環境まで~自然史ゾーン

アースモール・エンバイラマ館

 ティラノサウルスやトリケラトプス、そして全長35メートルという世界最大級のセイスモサウルスなどの骨格標本がある「アースモール」と、本物のように動くロボットが恐竜の時代を再現する「エンバイラマ館」は、やはりこの博物館の目玉です。


迫力ある骨格標本が並ぶアースモール


恐竜が生きた時代を体感できるエンバイラマ館

 「アースモールの骨格標本やはく製は、台などで高さを上げて設置せず、みなさんが歩くフロアと同じ高さで展示しています。なので、恐竜や哺乳類が実際にそばにいるような大きさを実感してもらえます」と博物館スタッフの濱田流水さん。みなさんも恐竜やマンモスを見上げた時の迫力をぜひ確かめてみてください。

自然発見館

 「自然発見館」では、岩屋海岸や紫川、曽根干潟などのジオラマを中心に北九州市の自然環境を紹介しています。「ここでジオラマを見て、実際に現地を訪れてみるのも面白いかもしれませんね」と濱田さん。また、鱗粉(りんぷん)で起きる光の干渉によって青く輝くモルフォチョウの展示も必見です。


北九州の自然を再現したジオラマ

美しく光るモルフォチョウ


「映え」ポイントも


 館内は一部を除いて写真撮影が可能。自然史ゾーンは至る所に「映え」ポイントがあり、特におすすめのスポットには表示が出ています。巨大なマンボウを背景に写真が撮れる場所もそのひとつです。


大きなマンボウを背景に写真撮影も


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北九州のあゆみがここに~歴史ゾーン

 歴史ゾーンは自然史ゾーンに比べると派手さはないかもしれませんが、味のある展示がたくさんです。

 北九州の三大夏祭り小倉・黒崎・戸畑祇園の山車や山笠、鎌倉幕府執権の北条時頼が創建したと伝えられる大興善寺(小倉南区蒲生)の仁王像、福岡県田川市の所蔵作品と関係資料が2011年にユネスコの「世界記憶遺産(世界の記憶)」に登録された山本作兵衛の炭鉱記録画などを見ることができます。


山本作兵衛に関する展示も

昭和30年代の世界に(探究館)

 令和の現在、この一角を見て「懐かしい」と感じる人も少なくなったのではないでしょうか。「探究館」にはプロ野球・西鉄ライオンズが日本一になった1958年(昭和33年)秋の八幡製鉄所の中原社宅(戸畑区)が原寸大で再現され、当時の一日を音と映像で演出。ドラマや映画で描かれる"遠い昭和"に迷い込んだ感覚になります。


はるか昭和30年代へトリップ

渋沢栄一と北九州

 日本資本主義の父と呼ばれ、新1万円札の顔にも決まった渋沢栄一。今年のNHK大河ドラマの主人公としても注目される渋沢が、北九州を代表する実業家・安川敬一郎に宛てた書簡10通が残っており、いのちのたび博物館に展示されています。

 この10通は1896年(明治29年)4月から翌年2月までのもの。官営製鉄所の建設地が八幡に決まった頃で、文面の中心は若松築港と筑豊興業鉄道に関するものです。


渋沢栄一と北九州のかかわりを紹介する日比野さん

 門司港や若松港、現在のJR鹿児島線や筑豊線といった北九州のインフラ整備に深くかかわった渋沢栄一ですが、彼を中央資本の代表とすると、地元資本の代表が安川敬一郎。お互いが手を組むことは、自分たちはもちろん国と北九州の双方に利となり、2人はいわば「win-win」の関係にあったといえます。

 書簡には次のようなくだりがあります。意訳すると、「博多港と鉄道整備がうまくいったら、筑豊の石炭が若松ではなく博多に運ばれるようになるかもしれない。そうなると自分たちにとってまずい」と心配する内容で、とてもリアリティがあります。実際には杞憂(きゆう)に終わるのですが。


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 「私たちはその後どうなるかを知っていますが、当時の彼らは先が分からない中で懸命に考え、行動しています。歴史を見るうえでそこは重要です」と、近・現代史担当学芸員の日比野利信さん。「新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた現在も同じです。のちの人たちが今をどうみるか。まだ誰にもわかりません」


北九州の近代化の足跡も紹介

 歴史や史料というと、難しくて興味がないという人も多くいます。しかし大河ドラマで繰り広げられるようなストーリーが、この書簡のやり取りを通して展開されていると想像すると、歴史とはとてもドラマチックなものだと感じられます。

 ちなみに歴史ゾーンで筆者のイチ押しは「長州戦争・小倉口合戦」の紹介VTRです。当時戦った小倉藩士たちに思いをはせるだけで胸が熱くなります。

 「自然史ゾーンだけで満足し、歴史ゾーンはあまり見ていなかった」という声もよく耳にします。実際、全館をしっかり見て回ると2時間はかかるでしょう。次の機会には時間をたっぷり使って歩いてみませんか。きっと新しい発見があるはずです。


 いのちのたび博物館では7月17日~9月26日、夏の特別展「THEモンスター展Ⅱ」が開かれます。新型コロナ感染防止のため、入館にはウェブ事前予約が必要です。



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