「子どもの村」支援 福岡市で5月18日に慈善リサイタル

 変声した男性が裏声を使って女性の音域を表現するカウンターテナー歌手の村松稔之さん(34)が5月18日、福岡市中央区のあいれふホールでリサイタルを開く。チケット売り上げの一部は、虐待など様々な理由で実の親と暮らせない子どもたちが里親と生活する西区の「子どもの村福岡」を運営するNPO法人に寄付される。村松さんは「歌を聴き、子どもの村の活動に関心を持つスイッチを押すことにつながればうれしい」と話す。

カウンターテナー歌手の村松さん


リサイタルへの思いを語る村松さん(右)と萬年さん

 村松さんは京都市出身。東京芸大大学院修士課程独唱科を首席修了後、イタリアに留学し研鑽(けんさん)を積んだ。

 児童合唱団に入団した小学6年で変声期を迎えたが、周囲に気づかれないほど地声のトーンが変わらなかった。カウンターテナー歌手は、国内にわずかしかいないが、力強い高音域と官能的な音色が魅力で、「テノールやバリトンでナンバー1になる適性はないが、カウンターテナーとしてオンリー1を目指すことが、自分のアイデンティティーになる」と思うようになったという。

 一方で、6歳の時には、神戸市東灘区で阪神・淡路大震災に遭った。自宅が倒壊し、避難所生活も経験。「命をつないでくれた毛布やパンが届いたのは、社会に多くのボランティアの存在があったからだと大人になって気づいた」という。

 東日本大震災以降は、売り上げの全額が被災地の子どもたちの支援に寄付されるチャリティーコンサートにも参加。子どもの頃に受けた支援を、音楽を通じて還元している。

「芸術は社会を動かす原動力」

 福岡で歌声を披露するのは初めて。きっかけは、リサイタルを主催する萬年順子さん(久留米市)との出会いだった。

 音楽に造詣が深く、イタリア留学経験もある萬年さんは、若手音楽家の発表の機会をつくるため、定期的にコンサートを開催。2015年からは、子どもの村支援のためのチャリティーコンサートも開いている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で4年ぶりの開催となった今回は、イタリアで縁があった村松さんに出演を打診し、快諾を得た。萬年さんは「カウンターテナーの生の歌声を聴ける機会は少ない。コロナで鬱々(うつうつ)とした日々を過ごした人に彼の天使の歌声を聴かせたい」と話す。

 村松さんも「芸術は時として社会を動かす原動力になると思う。僕の歌を聴いた人で、子どもの村の賛助会員になる人が1人でもいたら本望だ」と当日を楽しみにしている。

 リサイタルは18日午後2時開演。問い合わせはSOS子どもの村JAPAN法人事務局(092-737-8655)へ。


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