海を渡る「地島山笠」 コロナ越え4年ぶり、宗像市沖で

 博多祇園山笠のクライマックス「追い山笠(やま)」が行われた7月15日、福岡県宗像市沖の地島では、地島山笠が4年ぶりに海を渡った。住民の減少や高齢化に直面する島に、本土の大学生やほかの地域の山笠のメンバーらが駆け付け、伝統の神事を支えた。

高齢化に直面、島外の大学生ら支援


波しぶきを上げながら、洋上を進む地島山笠

 島の人たちなどによると、地島山笠は太平洋戦争中に途絶えたが、1971年に復活したという。島の南と中央にそれぞれ位置する泊、豊岡の二つの集落が交互に当番を務め、製作した山笠を漁船に乗せ、洋上を航行してもう一方の集落へ運ぶのが習わしとなっている。

 新型コロナウイルスの影響で2020、21年は開けず、昨年も山笠を飾っただけだった。

 今年は、豊岡の牧神社を出発。集落を巡った後、総重量約600キロの山笠を総出で漁船へ押し上げ、30分ほどかけて泊の港へ運んだ。泊でも集落内を舁(か)く予定だったが、7月10日の記録的な大雨で自宅が被害を受け、避難を余儀なくされている集落の住民に配慮して取りやめ、海につかって清めた山笠を厳島神社に奉納した。


山笠を海で清める男衆

 市によると、最盛期の55年には559人の島民がいたが、6月末時点で133人。島外の施設や病院にいる人も多く、実数はさらに少ない。九州共立大(北九州市八幡西区)の学生や本土の田熊山笠、島でかつて盛んだったサツマイモ栽培の復活に挑んでいる地島応援団のメンバーらが島に渡り、山笠を舁くなどして祭りを盛り上げた。

 豊岡で班長を務める漁師の吉田稔さんは「年を取り、島の者だけでは山笠を動かせない。頼もしい」と感謝し、同大3年井手口玲也さんは「島の人との関わりが新鮮で楽しい。消防士になって、この経験をいかしたい」と話した。


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