福岡県直方市と行橋市を結ぶ第3セクター・平成筑豊鉄道(福智町)は6月28日、今後のあり方を検討する法定協議会の設置を沿線9市町村に要請すると発表した。沿線の人口減やコロナ禍の影響で利用者が約30年前の3分の1に減少する中、将来的に年10億円規模の赤字の発生が見込まれるとし、路線維持の方策やバスへの転換なども含めた抜本的な議論を働きかける。
「将来的に年10億円規模の赤字」
2023年10月の改正地域交通法施行で、交通事業者が法定協の設置を要請できる規定が新設され、国土交通省によると交通事業者による要請は全国初。同鉄道によると、22~24年に民間委託して将来の収支を分析したところ、車両や設備の更新などにより、年約10億円の赤字が継続して発生すると判明。同鉄道は沿線市町村などから年約3億円の助成を受けているが、3倍以上に増やす必要が生じるという。
法定協が設置されれば、沿線市町村に県も加わり、鉄道設備の保有と運行を切り離す「上下分離方式」や、バスへの転換などを視野に、議論を進めることになる。記者会見した河合賢一社長は「10億円という数字は大きい。議論には白紙で臨みたい」と述べた。要請する時期については「なるべく早く」とした。
沿線自治体からは、鉄道の存廃にかかわる議論を警戒する声も出ている。法定協での議論について、鉄道存続を主張する福智町の黒土孝司町長は「バス転換ありきの議論になっては困る」とけん制する。同鉄道の副会長を務める田川市の村上卓哉市長は「9市町村の合意形成を優先したい」と話している。
同鉄道は県や沿線市町村などの出資で1989年に設立。かつて筑豊炭田の石炭輸送のため敷設された旧国鉄の路線約50キロを継承した。北九州市の門司港レトロ地区で観光トロッコ列車も運行している。