北九州市は2月18日、大学や研究機関、企業が集まる若松区の北九州学術研究都市について、さらに発展させるための新戦略を発表した。記者会見した武内和久市長は、5年間で外部研究資金50億円の獲得、10年間で大学や企業など200件の誘致を目標に掲げ、「市の発展への起爆剤として進めたい」と語った。
研究資金を獲得 大学・企業を誘致
学研都市は2001年4月に研究開発や産学連携の拠点として開設。同市立大と九州工業大、早稲田大、福岡大の4大学のほか、13研究機関、企業53社が集積し、学生や教員、企業の社員など計約3500人が在籍する。また、半導体を組み立てる「後工程」の世界大手・台湾の日月光(ASE)グループが2024年夏に市有地取得の仮契約を結び、工場新設を検討している。
市は現状について、技術開発や人材育成などで一定の成果は出ていると評価する一方、「市の将来を担う産業の創出には至っていない」と分析。台湾積体電路製造(TSMC)の拠点があり、半導体製造工場や研究機関が集積する台湾の「新竹サイエンスパーク」をモデルに、取り組みの見直しを図ることにした。
半導体関連などの集積図る
新戦略は「GーCITY戦略」と命名。Gは学研(GAKKEN)の頭文字で「グローバル」などの意味も込められ、「大学の『知』と先端産業が融合し、新たなイノベーションが連続して生まれる街」を目指すとした。半導体や次世代自動車などの産学連携に集中投資し、産業界のニーズと大学研究の橋渡しを担う専門家を登用する。外部の大学などとの共同研究、人材育成も推進する。
不足している産業用地は、周辺で民間開発も含めて創出を検討する。多くの人材を呼び込むため、八幡西区の折尾地区や若松区西部を含めた一帯の魅力向上も図る。国際的な認知度を上げる学会や展示会の誘致にも取り組むとしている。
規制緩和や補助金、税制などについて国や県に積極的に提案していく方針。企業の投資を促す仕組みづくりも進め、10年間で30社を学研都市発のスタートアップ企業として生み出す目標を掲げた。
記者会見前には、学研都市を運営する財団法人「産業学術推進機構」との協定に基づく交流の一環で、新竹サイエンスパーク管理局の陳宗權(チェンゾンチュアン)局長が市役所を訪問。面会した武内市長は「学術研究都市を進化させていくため、今後も連携していきたい」と語り、陳局長は「北九州市との協力、連携が深まることを期待している」と応じていた。