【熊本】人吉市にウイスキー蒸留所 高橋酒造が廃校跡で
熊本県人吉市の焼酎メーカー「高橋酒造」が、廃校となった同市立旧田野小の跡地を改修し、シングルモルトウイスキーの蒸留所を完成させた。3年後の販売開始を目指しており、観光客向けの見学コースも備えている。同社は「第二の創業ともいえる挑戦。九州豪雨からの復興にもつながれば」としている。
「第二の創業」 3年後の販売を目指す
同社は1900年に多良木町で創業し、球磨焼酎「白岳しろ」などで全国的に知られる。ただ、近年は若年層のアルコール離れや好みの多様化が進み、国内の焼酎市場は縮小。創業125年を迎える中、長年培った蒸留技術を生かし、世界的に人気の高まるジャパニーズウイスキー市場に参入することを決めた。
田野小は2014年、児童数の減少に伴い、木造校舎や体育館を残して閉校した。同小のある田野地区は標高680メートルの高地に位置し、夏は30度以上、冬には氷点下10度以下になる。ウイスキーの熟成に適した寒暖差に着目した同社が同小跡地を購入し、「田野蒸溜所」として23年から改修を進めてきた。
完成した蒸留所は、校舎と体育館を一体的に活用した木造一部鉄骨2階建てで、延べ床面積は約1300平方メートル。旧校舎には樽(たる)の貯蔵庫や試飲スペースを設け、旧体育館にはウイスキーの本場・スコットランドから輸入した蒸留設備などを置いた。隣接する熟成用の倉庫では、4500個の樽を保管できるという。
24年8月から生産を始めており、年間で原酒14.5万リットルの生産を見込む。見学の受け入れは来春からの予定で、将来的には年間2万人の来場を目指している。
10月16日に開所式があり、関係者がテープカットをして完成を祝った。同社の高橋光宏社長は「この地に息づく自然と文化を次の世代へとつなぎ、開かれた場所として大切に育んでいきたい。社員一同の力を結集し、真摯(しんし)に取り組んでいく」と述べた。