いつも、思い出のそばに。CS向上に一丸で取り組む福岡空港の「本気」を見て!
記事 INDEX
福岡空港の業務に携わる関係者が顧客満足度(CS)のさらなる向上に動き出しています。2020年夏、約180の事業者・団体で「TEAM FUK」を結成。ポスターや動画も制作し、コロナ禍が続く中で空港を利用してくれる人に感謝と笑顔を届けています。
日本有数の大規模空港
福岡空港は、国内線27路線、国際線19路線(2021年3月時点)が就航する大規模空港。国土交通省によると、国際線と国内線を合わせた年間の着陸回数は9万740回、旅客数は約2400万人(いずれも2019年)と国内4位です。
路線数や着陸回数もさることながら、最大の特徴はその立地。博多駅から地下鉄でわずか2駅(約5分)と、都心部からの近さは国内の主要空港で群を抜きます。飛行機には乗らなくても、空港グルメや滑走路見学を楽しむ地元住民も多いといいます。
空港は2019年に民営化され、「福岡国際空港(FIAC)」が運営を担っています。滑走路も増設される予定で、2025年の供用開始を目指して整備が進んでいます。
TEAM FUKって?
そんな福岡空港では約8000人が働いています。航空会社や国交省の関係者、飲食店に土産品店、清掃会社など、約180の事業者・団体は多種多様です。
FIACは、イギリスの航空格付け会社「スカイトラックス」の五つ星評価を獲得することを目指しています。国内の五つ星空港は羽田と中部国際の2か所だけだそうです。
CS向上に一丸で取り組み、国際的な指標でも高い評価を得ようと誕生したのが「TEAM FUK」です。それまでは事業者ごとに改善を図ってきましたが、チーム発足で情報共有が進み、垣根を越えた活動も可能になったといいます。
新たな取り組みの一つが「お見送り活動」です。月に数回、各航空会社やバス会社、清掃会社の従業員らが滑走路やデッキに並んで立ち、手を振って飛行機を見送ります。
「いつも、思い出のそばに。」をテーマに、動画とポスターも2月に制作しました。動画では、航空会社や飲食店のスタッフ、検疫官、タクシー運転手など空港で働く人たちが次々と登場し、「たくさんの『ありがとう』を、ありがとう」のメッセージを伝えました。
ポスターには「かけがえのない思い出が生まれますように」「笑い声と『ありがとう』があふれますように」と、スタッフの日頃の思いをつづりました。
担当者によると、空港の動画やポスターは青空を背景に制作する想定でしたが、撮影日はあいにくの曇り。しかし撮影していると、雲間から光が差し込む様子が「コロナ禍の希望」というイメージに重なり、そのまま採用したのだそうです。
旗振り役に話を聞いた
利用者に最高のもてなしを――。そんな思いからTEAM FUKが生まれ、空港の雰囲気にも変化が見られるといいます。FIAC経営企画本部のプロジェクト推進部副部長・室園幸志さんに話を聞きました。
――室園さんの普段の仕事について教えてください。
空港のCSを向上させるための提案や調整を行っています。空港には多くの企業・団体が集まっているので、満足度を上げるためには社内外の横断的な調整が大切です。
――TEAM FUKができて、変化はありましたか?
一番大きいのは、企業・団体間のコミュニケーションが活発になったことです。これまでは「個」で努力してきましたが、足並みがそろわなかったり、遠慮があったりしました。知り合いが増えて一体感が生まれると、働く人たちの輪が広がり、仕事も楽しくなってくる。その雰囲気は空港を利用する方にも伝わっていると思います。
――利用者にもメリットがあるんですね。
それぞれの事業者で得意分野は違いますから、気がつかなかった指摘をいただくことがあります。一つの物事に対する視点を増やし、「気づき」を共有できれば、さらなる改善につなげることができます。顔なじみが増えると、会社が違っても声をかけやすい雰囲気になり、利用者の案内もスムーズになりますよね。
――自身が普段から意識していることは?
「誰が空港を支えてくださっているのか」ということは常に忘れないようにしています。飛行機の乗客はもちろん、レストランを訪れる地元の方も空港の利用者です。その方々にとっての体験価値を上げられるようにしたい、と日頃から考えています。
――新型コロナウイルスで変化したことは?
航空機の運休で利用者は激減しました。だからこそ「飛行機を使わない人も空港利用者だ」という思いを強くしました。都市部と近い福岡空港は、地元の人たちにもしっかりと支えてもらっているんです。
また、感染症対策にも力を入れて、対策の国際認証「AHAプログラム」を取得しました。これは、成田空港に次いで国内2か所目です。
――これからの目標を聞かせてください。
ただ単に空港というのではなく、様々な人たちが交流し、利用者が「また行きたい」と思ってくれるような場所にしていきたいです。ハード面、ソフト面で改善を重ね、その結果として、国際的な五つ星評価をいただけたらと思います。