塾の1階にある書店「とらきつね」って? 鳥羽和久さんに聞く ~本とモノ編~

鳥羽和久さん(提供:寺子屋ネット福岡)

記事 INDEX

  • おのずと変わってしまう力
  • つくり手に会いに行く旅へ
  • 目の前を通り過ぎる本を棚に

 福岡市中央区の学習塾「唐人町寺子屋」と書店「とらきつね」を運営する鳥羽和久さん。店には、鳥羽さんが出会った本や雑貨が並んでいます。「生きている感じがする本やモノとつながっていたい」と話す鳥羽さんのインタビュー後編です。

鳥羽さんのインタビュー前編<「場」編>はこちら


鳥羽和久さん

1976年、福岡県生まれ。文学修士(日本文学・精神分析)。株式会社寺子屋ネット福岡代表取締役、唐人町寺子屋塾長、単位制高校「航空高校唐人町」校長として小中高生の学習指導に携わる。書店「とらきつね」で主催するイベントの企画運営、独自の商品開発も行う。著書に『おやときどきこども』(ナナロク社)ほか。


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「おのずと変わってしまう力」を信じる

――お店にあるモノにふと袖を引かれる感覚があるのですが。

 ありますよね。沖縄の張り子作家・豊永盛人さん(玩具ロードワークス)の人形やお面は何ともおかしみがあって。不思議なモノ、おもしろいモノって、ただそこにあるだけで身体が反応して近づいてしまう。思わず引き寄せられる感覚に目覚めるっていうか、そういう素直な身体の感覚を大事にしたくて。


店のそこかしこに潜む豊永さんの琉球張り子

 人間ってモノを自分で選んでいるようで、実はモノに動かされているんですよね。だから「モノには人を変える力がある」と思う。自分で変えようとする力より、「自然と変わっていってしまう力」を信じているんですよ。


鹿児島のしょうぶ学園の作家・翁長ノブ子さんの作品や京都・かみ添の唐紙


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つくり手に会いに行く旅へ

――国内外のつくり手を訪ねていますね。

 ほとんどの人に会いに行って、その時に感じたことをブログや本に書いています。沖縄で酵母や古代小麦と日々向き合う宗像堂さんのパンや、阿蘇の料理研究家かるべけいこさんのクッキーを食べると、生きているものに襲いかかられるような感覚になる。「生きものの気配」とつながるモノを置きたいんです。


販売日は行列ができるほど人気の宗像堂のパン

土の力を感じる、かるべさんのクッキー


――南インドのタラブックスまで!


 彼らがつくる本はどれも素晴らしくて。トライバルアーティスト(インド各地に暮らす先住民族の画家など)をパートナーとした本や、子どもの美術教育の本、女性やマイノリティーの権利向上に関する本とか。美しい本をつくるだけでなく、社会環境を変えることに果敢に挑む人たちです。


手すき紙の風合いやインクの香りに触れたくなるタラブックスの手製本

 南インドの大都市チェンナイへ、代表のギータ・ウォルフさんに会いに行きました。彼女は一緒に働く人たちを家族のように思い、彼らの子どもの学費まで面倒をみます。組織としての柔軟なあり方が日本とは全くちがう。


2018年、ギータ・ウォルフさんを訪ねて(提供:寺子屋ネット福岡)


 工房で働く人たちは1枚1枚絵を刷って、本をとじる仕事に心から誇りを持っていました。ギータさんは、仲間やアーティストの尊厳を大切にして、彼らの人生に光を照らす人なんです。


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