吾輩堂は本屋である 福岡の猫専門ネット書店がリアル店舗を出したわけ

吾輩堂の店主・大久保京さん

 猫にまつわる書籍や雑貨を取り扱う書店「書肆 吾輩堂」。猫好きが高じた店主の大久保京さんが、猫の書店経営の夢を描いたのは約30年前。ネット書店としてスタートし、2018年に福岡市中央区六本松の古民家を改修した店舗をオープンしました。出版不況が叫ばれる中、リアル店舗にこだわるわけとは。


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福岡・六本松の古民家で

 NHK福岡放送局の裏手に広がる昔ながらの住宅街。車では通れない細い路地に店はあります。築50年ほどの木造2階建て空き家を3か月かけて改修しました。改修費を浮かせようと、自らコテを握って内壁のしっくいを塗ったといいます。


この狭い路地を進むと吾輩堂がある

 年季が入った本棚やテーブルは、九州大学の旧箱崎キャンパス(福岡市東区)で使われていたもの。キャンパスが移転する際に使われなくなった備品で、大学から今も借りています。

 作品展などのイベントも頻繁に開かれます。「来年の催事スケジュールはほぼ埋まりました。再来年も決まりつつあります」。原画展や写真展、彫刻展など、すべてが猫にまつわるものです。


2階はギャラリーや物販

ネットからリアルへ

 大久保さんが福岡市内の自宅でネット書店を始めたのは2013年。猫ブームの勢いもあり、即売会のイベントに出店すると「実店舗はないの?」と聞かれるようになり、リアル店舗の構想が始まりました。イメージに合う物件を探し求めてようやく見つけたのが現在の場所です。

 店内にある4000~5000冊の書籍は、新刊が4割、古本が6割。すべて猫をテーマにした小説や絵本、写真集など。2階は座敷で、猫をモチーフにした日用品や置物などの雑貨を並べています。ビールやワインも販売し、店内の本を読みながら楽しめます。


古民家らしいたたずまいの店舗


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紙の味わいを伝えたい

 新型コロナウイルスの感染拡大で、4、5月の自粛期間中は営業を休止。再開後しばらくは客足が2割ほどに落ち込みました。「催事も中断を余儀なくされ、本当に残念でした」。一方、書籍のネット販売は巣ごもり消費で好調だったそうです。


2020夏のノベルティーグッズのうちわ

 大久保さんは「電子書籍が隆盛の昨今、紙の書籍の味わい深さも伝えていきたい」と話します。そして将来、自らも猫の書籍に携わりたいとも。「自分で書くのか、作家さんとコラボするのか分かりませんが、いつか出したいですね」と夢を描きます。

 大久保さんは自宅で4匹の猫を飼っています。そのうち1匹は京都・冷泉家から譲り受け、作家・原田マハさんの短編小説の題材にもなりました。猫好きの 猫好きによる 猫好きのための書店。ただし、店にリアル猫はいません。あしからず。

 吾輩堂では9月11~27日、絵本作家・石黒亜矢子さんの著書「九つの星」の原画展を開催します。



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