体の中をジェットコースターで縦横無尽の衝撃 福岡出身の絵本作者に聞く

オンライン取材に応じる中垣ゆたかさん

記事 INDEX

  • スピード感重視
  • 肝臓を見て!
  • 時代に左右されない

 細かな描き込みで独特の世界観を表現する福岡県出身の絵本作家、中垣ゆたかさん。ポプラ社より新作『人体ジェットコースター』を発表しました。コロナ禍という時代にありつつも、「時代に左右されず、長く読んでもらえる絵本をつくりたい」と語ります。オンラインでお話を聞きました。


中垣ゆたかさん

絵本作家、イラストレーター。2005年からフリーイラストレーターとして活動を開始し、2013年に絵本作家としてデビュー。『ぎょうれつ』『UFOのつくりかた』『ひらいて びっくり! のりもの のりもの』など作品多数。1977年、福岡県生まれ。東京都在住。

スピード感を重視して、勢いを消さないように

――どうして「人体」をテーマにした作品に取り組もうと思ったのですか?

 子どもの頃から人体には興味がありました。自分が小さくなって口から入っていくこととかを空想したり。ポプラ社の編集者との打ち合わせでは「10秒くらいで読める絵本にしたい」と話していて、ジェットコースターを登場させてダーッと読めちゃう絵本にしようと。当初は世界一周ものとかを考えていましたが、「人体の方が面白いよね」と挑戦することになりました。


血管を疾走する人体ジェットコースター(提供:ポプラ社)


――10秒で読める絵本ですか?

 絵本の構想をしていた頃、ちょうど長女に絵本の読み聞かせをしていました。正直、文章が多いと大変だなと思っていました。書いていることを自己流にアレンジして読んでも、子どもはちゃんと話の内容を覚えていて、間違いを指摘するんですよ。

 そういう自分の体験も手伝って、スピード感があって、何度も読み返せて、おまけに読み聞かせの負担を和らげる作品をつくろうと思いました。

――作品づくりで意識した点は?

 ジェットコースターの持つスピード感を重視して、勢いを消さないように注意しました。ラフ画(下描き)の粗さを残しつつ、描かれた線が生き生きとするように意識しました。

 作中では、体内の臓器を突き破ってジェットコースターが移動します。当初は胃とか肺とかに穴を開けてコースターを通していましたが、もともと穴があるんだと子どもたちに間違って伝わると良くないので、あえてぶち破るようにしました。


人体ジェットコースターで胃の部分を紹介したページ(提供:ポプラ社)


――お気に入りの臓器はありますか?

 今回描いてみて、肝臓が好きになりました。私はお酒はあまり飲みませんが、心臓や肺などに比べて肝臓の役割ってあまり知られていません。でも実は面白い臓器なんだなって。ここは背景を明るい色にして、目立つようにしました。ぜひ見てもらいたいです。

――絵本を縦開きにしたのもスピード感を重視した結果ですか?

 そうですね。当初の予定は横開きでしたが、縦の方がジェットコースターが落ちていく雰囲気が出るので、縦にして大正解でした。

――人体のことが詳しく描かれていて、幼児に限らず読める絵本だと感じました。意識した読者層はいますか?

 特定の年齢層に読んでほしいというのは意識していません。今回、人体というテーマは難しめですが、絵本に年齢制限はないと感じていて、0歳から読んでもらっていいし、大人が読んでもいいと思います。自分が子どもの頃、こういう絵本があったら好きになるだろうなとイメージして描きました。ラストの場面も楽しんでほしいです。

 繰り返し読んで、新しい発見があった方がおもしろいと思います。子どもたちにとって、人体に興味を持ってもらうきっかけになる作品になってほしいです。


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時代に左右されず、長く読んでもらいたい


「長く読んでもらえる絵本をつくりたい」と語る中垣さん

――福岡県のご出身です。思い出は?

 北九州市で生まれ、3歳から6年間は福岡市東区の香椎宮の近くで過ごしました。ザリガニを捕まえたり、博多湾ではカブトガニを見つけたりしました。

 コロナ禍で九州に帰省できていないので、早く行きたいですね。福岡のうどんは、ぶつぶつ切れる軟らかいうどんで、東京に引っ越したときコシの強いうどんに違和感を感じたのを覚えています。

――どうして絵本作家になったのですか?

 イラストレーターとしてキャリアを始めましたが、出版社に絵本の持ち込みもしていました。ただ、編集者に怒られて帰ってくることが多くて、絵本はハードルが高いなという印象がありました。そういうわけでイラストレーターに重心を置いて仕事をしていたら、私の挿絵を気に入ってくれた出版社が現れて、絵本の仕事をいただくことになりました。絵本作家としてデビューして、人体ジェットコースターはちょうど20作品目になります。

――これからの作品づくりで目指していることは?

 スマーフやクルテクなど、子どもの頃に見たキャラクターは今でも好きです。自分が子どもだったら読みたいだろう絵本をイメージして作品をつくっています。

 子どもたちの好奇心を刺激してあげて、子どもたちが純粋に楽しめる作品を描きたいと思っています。そして、今の時代に合わせた作品ではなく、時代に左右されず、長く読んでもらえる絵本にしたいとも。10年後も面白い絵本でないと、私は嫌だなと思っちゃいますね。


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