独立系書店ブックスキューブリック店主 大井実さんインタビュー【仕事編】

記事 INDEX

  • ちょっと福岡は図に乗ってないかい?
  • 「ハレ」があると仕事は楽しい
  • 自分の仕事をデザインしよう

 ブックスキューブリック代表の大井実さんのインタビュー後編は、ブックスキューブリックの【仕事論】。「自分の仕事は自分でデザインする」。大井さんが語るお仕事の話です。


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大井実さん

1961年生まれ。福岡市出身。ブックスキューブリック代表。2001年に福岡市中央区赤坂のけやき通りにブックスキューブリックを創業。2008年には2号店となる箱崎店を開店。「福岡を本の街に」を合言葉にしたイベント「BOOKUOKA」を企画するなどまちづくりにも取り組む。

本を読むのが格好悪い時代ではなくなった

――イタリアから帰国してすぐに書店開業ですか?

 いや、イタリアから帰国したのが1991年で、福岡に来るのは1990年代の終わり。イタリアにいたとき、在住の日本人彫刻家のマネジャーになりました。個展の手伝いをしたのがきっかけで、帰国後の東京で秘書のような立場で働いていました。その後は大阪。江戸・天保期の建物をリノベーションしてギャラリーに改修しました。当時、リノベーション物件はほとんどなかった。イケイケのバブルの雰囲気が残っていて、古い建物をリノベする感覚がなかったですから。


箱崎店のカフェはゆったりとした時間が流れる

――書店を経営するにしても、「活字離れ」が言われて久しかったですよね。

 「活字離れ」はずっと言われてますから。書店を始める前からずっと。しょうがないですよね。インターネットは1990年代に入って出てきたから、ネットのない時代に育った人と、ネット時代に生きる人とでは違うんですよ。ネットをずっと見ているから、書籍を読む時間が減るのは当たり前。でもそんなに卑下することはないです。車に乗る人もいれば、車に乗らず生活する人もいる。すみ分けです。本の活字とデジタルの文字の世界は、すみ分けができると思っています。若い世代も、本を通じて仲良くなることがあって、けっこう本を読んでくれています。今年の「BOOKUOKA」の激オシ文庫フェアは、高校生が参加します。応募もたくさん来ています。活字離れと言われつつも、本を読むのが格好悪い時代でなくなったと感じています。

大井さんのインタビュー前編【地方編】はこちら

 過去を振り返ると、強い体験をしたことでないと記憶に残らないのが実感です。電子書籍よりもパッケージ化された本の方が記憶装置として優秀で、買った場所や装丁など、五感で本の記憶が残りますから。記憶に残る体験をどれだけ積み重ねられるかが、充実した人生を送る秘訣だと思います。電子書籍よりも記憶に残りやすいのは本の強み。デジタルネイティブ世代も、私らのような年齢になったときに実感するんじゃないかな。


お店のこだわりもカフェの黒板に書かれている

 現代のように情報量が多すぎると、大海から砂粒を拾うみたいに情報収集だけで人生が終わってしまう。若い人にお膳立てするのは大人の義務だと思っています。


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