なぜ、ガンダムが福岡に? キーマンに話を聞くと納得の答えが返ってきた

 福岡市博多区の大型商業施設「ららぽーと福岡」が開業して2か月近くが過ぎました。敷地には人気アニメ「機動戦士ガンダム」の実物大立像がそびえ、ガンダムの世界観をイメージした複合エンターテインメント施設もあります。市内では2019年にもガンダムのプラモデルを販売する国内2番目の旗艦店が東京に次いでオープンしています。なぜ福岡なのか? キーマンに話を聞くと、納得の理由を教えてくれました。

続々とガンダム施設

 ららぽーと福岡のガンダム立像は、施設のシンボル的な存在として、筑紫通りに面した入り口そばに登場しました。

 モデルは、1988年公開の映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」で、主人公のアムロ・レイが搭乗した「ν(ニュー)ガンダム」。ストーリー性やデザイン性から、今でもファンの間で根強い人気の機体です。装備やカラーリングを一新し、「RX-93ff νガンダム」という新しい型式番号も与えられています。


「ららぽーと福岡」にお目見えしたνガンダムの立像

 公式のガンダム像を見ることができるのは2022年5月現在、東京・お台場、横浜、中国・上海、福岡の4か所。福岡の立像は全高24.8メートルで、最新にして最大。周囲には人だかりができ、多くの人がその雄姿をスマートフォンで撮影しています。

 ららぽーと福岡には、ガンダムの世界観が広がるショップエリア「GUNDAM SIDE-F」や、テレビのスポーツバラエティー番組のような体験ができる「VS PARK WITH G」などで楽しめる「ガンダムパーク福岡」も、世界で初めてオープンしています。


ガンダムの世界観に触れられる「GUNDAM SIDE-F」

 SNSでは羨望の声も上がっています。5月上旬に大阪から訪れた50代の男性は「本当にうらやましい。大阪にもあれば…」と立像を見上げていました。福岡は今、全国のガンダムファンの注目を集めているのです。


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アジア戦略の拠点に

 実は、福岡市は2019年にもガンダムファンの間で話題になりました。同市博多区の複合商業施設「キャナルシティ博多」に、ガンダムのプラモデル(ガンプラ)を販売する拠点「ガンダムベース福岡」がオープンしたのです。


2019年にオープンした国内2か所目のガンプラ旗艦店

 「どうして福岡に集中するのか?」。全国のガンダムファンの中には、そう思う人も少なくないでしょう。記者も、ガンダム像については「東京、横浜と来たら、次は大阪でしょ」と思っていました。

 その疑問を、バンダイナムコエンターテインメント(東京)の常務でガンダム事業を統括するCGO(チーフガンダムオフィサー)の藤原孝史さんにぶつけました。

 背景には、"アジアの玄関口"として福岡の存在感があるようです。アジアでは近年、ガンダムの人気が高まっています。藤原さんは「距離的に近く、アジアからの旅行者も多い福岡は絶好の場所」と話します。


「福岡はアジアにガンダムをアピールする格好の場所」と語る藤原さん

 2000年代にテレビ放映された「機動戦士ガンダムSEED」は国内だけでなくアジアでも人気に。その後の「機動戦士ガンダム00」でさらに火がつきました。藤原さんは「日本とアジアで同時に作品の人気が上がり、確信を持った」と振り返ります。

 同社によると、バンダイナムコグループにおけるガンダム関連の売上高は、2010年の382億円から20年には950億円にまで伸びました。プラモデルだけをみても、販売拠点の「ガンダムベース」は韓国や中国、台湾などに集中し、年間販売額の半分は海外だといいます。


中国・上海で人気の実物大フリーダムガンダム立像 ©創通・サンライズ

 新型コロナウイルスの感染が広がる前は、福岡県を訪れる外国人の多くはアジアからの旅行者でした。そうした地理的特性から、アジアのガンダムファンを日本へ迎える"玄関口"として福岡を位置づけ、魅力ある施設を集中させているようです。

 一方で、懸念もあります。新型コロナの影響でこの2年間は、イベントの多くが中止になり、藤原さんは「販売データでは分からない、お客さんの熱量を肌で感じることができていない」と不安を口にします。それでも、外国人観光客の入国が6月10日から再開されるなど、明るい材料も出てきました。藤原さんは「福岡はガンダムのアジア戦略の拠点。ここから、ガンダムの魅力を発信したい」と力を込めました。

「νガンダム」の理由

 ファンにとってもう一つの疑問は、福岡の立像が「なぜνガンダムだったのか」ではないでしょうか。それは、「たまたまタイミングがそうだったから」だそうです。

 これまで、初代ガンダム(東京など)、ユニコーンガンダム(東京)、フリーダムガンダム(中国・上海)の立像が設置されてきました。藤原さんは「人気の高い機体を選んできて、次はνガンダムと決めていました。それが、福岡のプロジェクトとタイミングが重なったのです」と説明します。


夜間にはライトアップされ、映像を交えた演出もある

 νガンダムといえば、劇中に登場する機体は黒に近い塗装で、左肩に装備した6枚の「フィン・ファンネル」が特徴でした。立像ではトリコロールカラーとなり、装備も「ロングレンジ・フィン・ファンネル」に一新しています。「劇中のものをただ立てるのではなく、新しいガンダムを現実に作るということにこだわっている」と藤原さん。新しい型式番号を与えられているのも、これが理由でした。

 ガンダムでも注目を集める福岡。実は、藤原さんの両親は福岡県の出身で、自身にとっても思い入れのある土地です。「住み心地がよさそうで、老後は福岡で暮らしたい」と、ガンダムのアジア戦略とは別に、福岡に熱い視線を向けています。


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