潮が引くと出現する驚きの光景 福岡市西区・今津干潟に眠る墓石群

今津干潟の海岸沿いに無造作に転がる墓石

 「生きた化石」と呼ばれるカブトガニの産卵や、貴重な野鳥とされるクロツラヘラサギが飛来することで知られる福岡市西区の今津干潟。この海岸では、古い墓石が大量に横たわる不思議な光景が見られるのだという。干潮の時間を調べて訪れた。


満潮時の海岸(上)と、干潮時に現れた墓石や自然石

 堤防から干潟を見下ろすと、自然石に混ざって、古い墓石が約50メートルにわたり帯状に点在していた。大きいもので1メートルほど。名前や戒名が刻まれ、「昭和」「明治」のほか、「宝暦」や「明和」といった江戸時代の年号も確認できる。「夫婦墓」という文字も読み取れた。


「宝暦」の文字が見える墓石の上で休む干潟の生き物


 一部は貝殻が付着し、墓石の合間をぬうようにカニが移動している。


墓石の底には貝殻などが付着していた

 福岡県土整備事務所によると、2018年に近くで野鳥を観察していた人が墓石群に気付き、「不法投棄では」と警察に通報した。調べると、半世紀ほど前、「魂抜き」の供養を行った墓石を、護岸工事の基礎部分を保護するために使ったことが分かったという。


護岸工事の基礎固めに使われたという墓石

 元は10キロほど離れた福岡県糸島市芥屋地区にあった墓石。同地区に納骨堂を建てることが決まり、不要になる墓石が転用されたとのことだ。

 「当時の資料が残っていないので詳しくは分からないが、墓石を転用することについては地元の了解を得ていたようだ」と担当者は話す。


干潮時の干潟では、様々な生き物がうごめいていた

 耳を澄ますと、潮が引いた干潟から、生き物たちのささやかな"息づかい"が聞こえた。静かに手を合わせ、干潟を後にする。見上げると厚い雲が空を覆っていた。


干潟の先に福岡市中心部が見えた



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