棺の中で自分の最期を考える 終活イベントで「入棺体験」
記事 INDEX
- 関心はあるけれど……
- 「死への恐れ、薄らいだ」
- 写真撮影会や人形供養も
誰にでもいつかは訪れる人生の最期。「元気なうちに、自分らしい迎え方を考えておきたい」――。人生の終焉(しゅうえん)に向けて準備する「終活」が注目されている。すっかり秋めいた10月下旬の土曜日、冠婚葬祭業の「サンレー」(本社・北九州市)が北九州市八幡西区で開催した終活のイベントに参加した。
関心はあるけれど……
「終活に関心はあるが、何をすればいいのか分からない」という人に向けて、同社では定期的に、遺影としても使える写真の撮影、人形供養などを行うイベントを開いている。この日も、終活について考えている地元住民ら約900人が会場のサンレーグランドホールに集まった。
目玉の一つは、葬式用の棺(ひつぎ)に入る「入棺体験会」だ。私も入ってみた。想像していたより狭く肩をすぼめる。棺の蓋が閉められた。でも中は真っ暗にはならず、かすかに光が差している。
目を閉じてみた。父と母の葬式での、別れのひとときを思い出した。棺で眠る肉親の額に触れながら語りかけた言葉や思いは、父と母に伝わったのだろうか――。棺の中でしばらく物思いにふけった。
「死への恐れ、薄らいだ」
同市八幡西区の村上早苗さん(66)は、4月に母が亡くなったことで、死をより身近に感じるようになったという。「どんな思いを抱くのか、棺に入って、あらかじめ知っておきたい」。そう思い、少し勇気を出して1人で参加した。
「遠からず自分も見送られる立場になることを実感しました。今回の体験で死への恐れが少し薄らいだ気がします」。約1分間の入棺体験後、村上さんは涙を時折見せながら話してくれた。
「死生観を見つめ直すきっかけになれば」と同社。担当者は「自分の葬儀を想像して、『あの人にあんなことを言ってしまったな』『あの人にはやさしくしよう』など、今生きていることの尊さに気づき、豊かな人生を送ってほしい」と話す。
写真撮影会や人形供養も
このほか、プロカメラマンによる無料イベント「思い出写真撮影会」も行われた。開始前から10組が順番を待つ人気ぶりで、八幡西区から訪れた田中サキエさん(85)は「元気な時に撮った写真を残したいと思って参加しました。いいものが撮れたら遺影にします」とレンズに顔を向けた。
「人形感謝供養祭」もあり、役目を終えた様々な人形が祭壇に並んだ。担当者によると、寺社での供養は古くから行われているが、終活の一環として身辺を片付けることへの関心が高まり、最近は葬儀社を利用する人も増えているという。
葬祭業などを手がける「燦(さん)ホールディングス」が、40~70歳代の男女を対象に首都圏で今年3月に実施した調査では、「終活」の認知度は95%に達するが、実際に終活を「したことがある」人は7%にとどまった。
一方で、終活を「したいと思っている」人は57%に上っている。終活の目的は、「のこされた人に迷惑をかけないため」と答えた人が83%を占め、「自分のために」と考える人は少数派だった。