北九州の世界平和パゴダ ミャンマー人僧侶が365日欠かさない安寧の祈り

記事 INDEX

  • 国の登録有形文化財に指定
  • 門司港から200万人が戦地へ
  • 天井は壊れ目立つ老朽化

 北九州市門司区の「世界平和パゴダ」が、国の登録有形文化財に指定されることになりました。世界平和パゴダは国内唯一の本格的なミャンマー式寺院の仏塔で、太平洋戦争で門司港から出兵した戦没者の慰霊のため建立されました。ミャンマーから派遣された僧侶が毎日3回、決まった時間に祈りをささげています。


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門司から200万人が戦地へ

 パゴダは、関門海峡が眼下に見える小高い山頂近くにあります。高さ27メートルの仏塔の最上部には、水晶で飾られたダイヤモンド・ピナクル(尖塔冠)が飾られています。


世界平和パゴダの仏塔の最上部

 門司にパゴダが建立されたのには理由があります。門司港駅近くに立つ「門司港出征の碑」によると、戦時中、門司港は200万人を超える兵士を南方戦線や中国大陸などへ送り出したとされます。多くの犠牲者を出した「インパール作戦」に加わった兵士もいました。戦争終結後の1958年、帰還兵が中心となり、戦没者の慰霊と世界平和への祈りを込めたパゴダが完成しました。


パゴダのピナクルを載せたみこしを担ぐ関係者(提供:世界平和パゴダ奉賛会)

 パゴダは2011年、僧侶の不在や資金難を理由に休館に追い込まれます。しかし翌年、ミャンマー仏教会から新たな僧侶が来日して運営を再開。今もミャンマー人の僧侶が祈りをささげています。


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天井は壊れ目立つ老朽化


世界平和パゴダの外観


 朝のお勤めを取材しました。午前6時半、住み込みの僧侶2人が仏塔へ続く階段を上がっていきます。新型コロナウイルスの予防で、1人はマスクを着用していました。パゴダには金色に輝く1.6メートルの仏像が安置され、太平洋戦争のビルマ戦線に参加した戦没者の位牌が並んでいます。

 建立から60年が過ぎたパゴダは、老朽化による傷みが目立ちました。並んでお経をあげる2人の僧侶の頭上に目をやると、天井の所々に穴が開き、壁に掛かる絵も一部がぼろぼろになっています。


読経する2人の僧侶

 お経は5分ほどで終了。2人に話を聞くと、パゴダでのお祈りは1日3回、欠かさず行われているそうです。

 休館が契機になって発足した民間の支援組織「世界平和パゴダ奉賛会」。運営を支えた戦争体験者が減り、寄付が集まらなくなってきたことから、地元有志が中心となり設立しました。奉賛会の関係者は「国の登録有形文化財になるパゴダの存在、僧侶たちの活動を多くの人に知ってほしい。戦争体験者が減り、パゴダの老朽化も著しいです。戦後75年の今、パゴダが平和を考えるきっかけになれば」と話しています。



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