福岡から世界最大級のロボコン制覇へ「フクオカニワカ行きまーす!」
記事 INDEX
- ロボットLOVEな技術者集団
- チャイナパワーの厚い壁
- 日本の「お家芸」を超えろ
ロボコン集団「FUKUOKA NIWAKA(フクオカニワカ)」。福岡市博多区に活動拠点を構える、大学生を中心とした若手エンジニア集団だ。世界最大級の対戦型ロボットコンテスト「ロボマスター」優勝を目標に掲げ活動している。彼らの基地・ニワカラボに潜入して話を聞いた。
ロボットLOVEな技術者集団
フクオカニワカは2017年、ウェブ広告などを手がける「ニワカソフト」(福岡市中央区)の古賀聡社長が呼びかけ、ロボマスターの出場を目指して誕生した。拠点のニワカラボはニワカソフトが提供している。
現在の活動メンバーは約40人。リーダーの林田健太郎さん(九州工業大学2年)ら大学生を中心に、高等専門学校生、社会人、教員などバックグラウンドは様々だ。
プロジェクトマネジャーの光武亨さん(九州大学4年)は参加の理由を語る。「ガンダムとか、ロボットって単純に格好いいじゃないですか」。メンバーの多くが純粋なロボット好きだ。
世界最大級のロボコン「ロボマスター」
ロボマスターは2015年、ドローン大手「DJI」(中国・深圳)が若手エンジニアの育成を目的にスタート。ドローンや自動制御ロボットを駆使して敵陣の攻略を目指す対戦型ロボコンで、FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)のようなゲーム性が若者から支持され、中国を中心に人気が広がっている。
ロボマスター日本委員会によると、2019年大会までの累計で400以上の大学から3万人以上の学生が参加。2019年大会の動画視聴者数は約200万人にのぼったという。
フクオカニワカは2018年と2019年の大会に連続出場。今年の大会は新型コロナウイルスの影響で中止になった。
チャイナパワーの厚い壁
フクオカニワカは初出場の2018年大会でいきなりベスト16の好成績を残した。しかし、2019年は本戦出場を前に予選で敗退。世界のライバルチームの成長スピードが予想を上回っていた。
急速な経済発展とともに、ハイテク分野でも世界をリードしつつある中国。中国チームのパワーには圧倒されることも多いという。
政府の支援による潤沢な資金力に加え、中国市場では安価な電子部品が簡単に手に入る。国内の関心度は高く、工学系の学生にとってロボマスターはあこがれの舞台。ここでの活躍は卒業後の就職にも直結するというから、学生の目の色が違う。
フクオカニワカは、ロボットの製作費だけで年間300万円ほどが必要だという。ロボットの輸送コストも重くのしかかる。世界で戦えるチームをつくるには、多くのスポンサー企業による支援は欠かせない。
「真似できるもんならやってみな」
ロボマスターでは、大会優勝チームの技術はオープンソース化(無償公開)されることが推奨されているという。つまり、翌年の大会は全チームが前年優勝チームのノウハウを吸収して臨むことになる。
よその技術を真似し、逆に盗まれても構わないというのが、多くの中国チームの考え方だという。「模倣する高い技術力も備えているし、『真似できるもんならやってみな』というスタンス」と、あるメンバーは言う。
大会ルールはゲーム性を追求して毎年のように更新され、ロボット版「eスポーツ」の様相を呈している。変化に対応していくスピード感は欠かせない。
フクオカニワカの活躍で、日本国内でのロボマスターの注目度も徐々に高まっている。今では全国7チームが活動している。
日本の「お家芸」を超えろ
「射撃精度のような細かな部分で日本勢は強い」。林田さんは日本のチームの特徴を説明する。だが、「精密さ」という日本のものづくり文化が受け継いできた「お家芸」だけでは、今の世界で勝てないのも事実だ。
独創的なアイデアに加え、したたかなゲーム戦略も必要になる。昨年の悔しさをバネに、中国勢の情報も収集し、世界で再び戦えるチームづくりを進めている。
「地元・福岡の皆さんにもっと応援されるチームにしたいし、福岡から世界をリードするエンジニアを輩出したい。そしてなにより、2021年の大会は世界をあっと驚かせたい」。林田さんたちはリベンジを誓っている。
エンジニアフレンドリーシティ福岡アワードを受賞
フクオカニワカは、福岡市が主催する「エンジニアフレンドリーシティ福岡アワード」のコミュニティ部門を受賞した。赤煉瓦文化館(福岡市中央区)の「エンジニアカフェ」で12月12日に授賞式があり、林田さんが高島宗一郎市長から表彰状を受け取った。