ご飯にぶっかけてサラサラと 大野城に伝わる「鶏ぼっかけ」
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記事 INDEX
- ふるさとの味といえば!
- 文化庁「100年フード」に
- 飲食店やレトルト品でも
鶏がら出汁(だし)に鶏肉を入れて煮込み、甘めの醤油(しょうゆ)で味付けし、ご飯にかけて味わう――。「鶏ぼっかけ」は、福岡市のベッドタウンとして発展してきた福岡県大野城市の郷土料理で、酒席の「しめ」、また来客時のごちそうとして、地元で愛されてきました。
ふるさとの味といえば!
「大野城の郷土料理・鶏ぼっかけはいかがですか?」。9月に市内で開かれたイベントの会場で、市民有志でつくる「大野城鶏ぼっかけ隊」が郷土の味を実演販売していました。
鍋から漂う甘くほんわりした香り。用意した200食は2~3時間で完売しました。市の職員でもある小野春奈隊長は「10年、20年先に『大野城のふるさとの味といえば鶏ぼっかけやね』と思ってもらえることを目指しています」と語ります。
「ぶっかける」を意味する「ぼっかけ」。大野城市の上大利・牛頸(うしくび)地区周辺で江戸時代後期から続くとされる料理で、お茶漬けのようにサラサラといただきます。
文化庁「100年フード」に
各家庭で味つけや調理方法が受け継がれてきた鶏ぼっかけ。ベッドタウンであるがゆえに転出入者が多く、認知度は思ったほど高くないのが実情です。
大野城市商工会が中心となって2011~13年度に取り組んだ「着地型観光商品開発事業」では、鶏ぼっかけに焦点を当てました。この地域に伝わる料理に三つの定義を設定し、「大野城 鶏ぼっかけ」のネーミングで本格的なPR展開が始まりました。
■「大野城 鶏ぼっかけ」の定義
①鶏がらスープに鶏肉を入れる
②ご飯にぼっかけ(ぶっかけ)る
③野菜で彩りを添える
13年7月には市職員や飲食店関係者ら有志が、息長くPRを続けるために、大野城鶏ぼっかけ隊を結成。家庭で長年、鶏ぼっかけを作ってきた女性にレシピを教わり、忠実に再現しました。材料は鶏肉、ショウガ、酒、醤油とシンプル。味の決め手は、地元の老舗「ゑびす醤油」(筑紫野市二日市)の甘めの醤油を使うことだそうです。
ぼっかけ隊は現在も約10人のメンバーを中心に普及啓発に励んでいます。こうした地道な活動もあって、22年度には地域特有の食文化として次世代に継承する文化庁の「100年フード」に認定されました。
飲食店やレトルト品でも
本来は家庭料理ですが、市内の飲食店でも味わうことができます。大野城心のふるさと館にある「ここふるショップ」では、錦糸卵と刻みネギ、刻みノリで彩りを添えた鶏ぼっかけ(単品で税込み600円)をカフェのメニューに載せています。
カフェで実食してみました。茶色い出汁の見た目から、少しこってりした味を想像しましたが、口に運ぶと意外にあっさり。滋味深く、ほっこり気分になりました。
心のふるさと館の中薗眞子さんは「鶏ぼっかけは人気メニューの一つです。郷土料理と知って注文する人もいます」と話します。
家庭でも気軽に食べられるように、市内の事業者がレトルトや冷凍の商品を開発しています。1食分入りのレトルト食品(508円)や3食分の冷凍商品(1620円)があり、ここふるショップで購入できます。
市内の小学校では、鶏ぼっかけを給食の献立に取り入れています。また、家庭で食べてもらえるように調理法を紹介する動画を制作し、YouTubeで公開しています。
小野隊長は「鶏ぼっかけは素朴な料理で、自然が残り、温かみのある大野城の地域性をよく表していると思います。鶏ぼっかけを広めることで、大野城市の魅力を市内外に伝えていきたい」としています。