「魚食」の文化をつなごう! 福岡で魅力を伝える活動広がる

九州近海で取れた魚

記事 INDEX

  • 魚のさばき方を学ぼう
  • たくさん魚を食べて!
  • 引き立て役にワインを

 11月3~7日は「いいさかなの日」。海に囲まれた日本には、豊かな漁場に恵まれ受け継がれてきた魚食文化がある。魚離れが進む中、未来へつないでいこうという活動が福岡県内で進められている。

魚のさばき方を学ぶ

 九州近海から約300種の魚介類が集まる福岡市の長浜鮮魚市場で10月中旬、魚のさばき方を学ぶ「おさかな学校」が開かれた。この日は、対馬沖で取れたサバが並んだ。


サバのさばき方を実演する竹島さん

 「釣ってすぐに締めているから鮮度がすごくいい。ウロコが残っているので丁寧に取って」

 仲卸業者の有志でつくる「博多銀鱗会」のメンバーである竹島久喜さん(56)が調理室で実演。その後、参加者は同会メンバーの手ほどきを受けながら三枚おろしに挑戦した。


仲卸関係者の指導を受けながら、三枚おろしに挑戦する参加者

 地球温暖化による魚への影響や、水揚げされたばかりの約10種の魚についての説明もあった。岡垣町の石田望さん(37)は「切り身を買うことが多いので貴重な機会。色々な話が聞けて楽しい」と笑顔を見せた。

 福岡を中心に魚食普及に取り組むプロジェクト「サカナグミ」の一環。代表の本田淑子さんは、魚食関係のテレビ番組でディレクターを務めていた際、若者の魚離れをひしひしと感じた。番組終了後も「魚の魅力を広めたい」と、2016年から同会などの協力を得て活動を続けている。


「食卓に魚を」と話す本田さん(左)


 参加費は3000円で、次回は11月15日。料理研究家・古川年巳さんから調理法を習うクラスや、子ども向けの教室も開く。本田さんは「いつもの食卓に自分でさばいた魚を並べて、家族や友人と味わってほしい」と語った。


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たくさん魚を食べて!

 魚介類は健康への効果も期待されるものの、国内消費量は11年度に肉類と逆転し、その後も減少傾向が続く。水産庁は22年10月から毎月3~7日を「さかなの日」に制定し、水産物の消費拡大を進めている。

 宗像市では、ボランティア団体「魚さばき隊」が子育て中の母親らに教室を開くなど、若い世代への継承に力を入れる。市内の中学校では、授業で地元のアジを活用したレシピ開発に取り組む。担当する橋本良子さん(79)は「宗像の新鮮でおいしい魚を知ってもらい、魚離れを食い止めたい」と語る。


ウェブサイト「じざかなび福岡」

 県は地魚の種類や漁法、イベントなどを紹介するウェブサイト「じざかなび福岡」を開設しており、関連する通販サイト「じざかなびプラス」では、地魚や水産加工品を購入できる。長浜鮮魚市場では11月9日、市場の一部を開放する「市民感謝デー」が予定されており、鮮魚の販売や本マグロの解体ショーなどのイベントが催される。

引き立て役にワインを


醸造タンクを前に、ワインへの思いを語る馬淵さん

 地魚を引き立てるワインづくりに挑戦する取り組みも。魚食文化を絶やしたくないと、糸島市で飲食店経営や漁村の体験ツアー開催などを手がける馬淵崇さん(43)は2019年、漁業関係者らとともにスペインを視察。魚介料理と地ワインを求めて世界中から観光客が訪れ、地元民が郷土の食や文化に誇りをもっている姿に感銘を受けた。

 馬淵さんは23年、岡山の酒造会社で醸造に携わりオレンジワインをつくった。魚介料理に合う辛口に仕上げ、市内の「志摩の海鮮丼屋」などで地魚とともに提供している。


「志摩の海鮮丼屋」では旬の地魚を使った料理と一緒にワインを味わえる


 24年7月には市内に、拠点となるワイナリー「糸島マスエワイナリ」を開設。糸島産のブドウも使って初の醸造に取り組んでおり、年内にも出来上がる。

 ワイナリーでは、宿泊や食事を順次提供していく予定で、馬淵さんは「生産者と消費者が語り合える場になれば。地魚の価値を高め、良さを世界に発信したい」と力を込める。

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