アマゾンの「おすすめ」にない出会いを 今年もブックオカが開催中
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記事 INDEX
- きっかけは飲み屋から
- その満腹感、本物ですか?
- ネットの「おすすめ」にはないリアル
読書の秋――。福岡市内最大級の本の祭典「BOOKUOKA(ブックオカ)」が今年も開催中だ。「福岡を本の街に」をスローガンに、書店員や編集者などでつくる実行委員会が2006年から続けている。今年は10月25日~11月20日、古本市やオンライントークイベント、文庫フェアなどを開催。メインイベントの青空古本市「のきなし古本市in福岡城」は11月3日、福岡市中央区の舞鶴公園で開かれる。
きっかけは飲み屋から
「完全に飲み会の会話から」。福岡市内に2店舗を構える独立系書店「ブックスキューブリック」の店主・大井実さんはブックオカ誕生のいきさつをこう振り返る。
東京・不忍通りで行われた古書イベント「一箱古本市」を参考に、福岡市・けやき通りで古本市をしようというアイデア。福岡市の出版社「忘羊社」の藤村興晴さんと酒を飲みながら話が盛り上がったという。
出版社や書店員など、本に関わる人間が集まって実行委員会を組織。「文化祭のノリでどんどん出てくるアイデアを『全部やっちゃおう』って、総合ブックフェスとして始まった」。蓋を開けると、古本市は複数のメディアにも取り上げられ、「初年度からものすごい人が来た」と大成功を収めた。
その時の喜びと感動が、続けていく原動力になっていると大井さんは語る。2017年には地域の文化振興への貢献が認められ、「福岡県文化賞」を受賞した。実行委メンバーは今も相変わらずの「手弁当」だが、コロナ禍にも負けず昨年も今年も続いている。昨年の古本市は、過去最高の売り上げを記録した。
その満腹感、本物ですか?
古本市だけではない。福岡県内の書店員がおすすめしたい本を紹介する「激オシ文庫フェア」は県内22店舗で開催している。今年の選書テーマは「もっと怒りを!」。「コロナ禍でフラストレーションがたまっているだろう。怒りは定期的に発散させないといけないと思っていて、過激なテーマを選んでみました。選書する側はちょっと難しかったみたいですが」
グーグルやアマゾンなど"世話焼き"な巨大IT企業は、利用者の好みを収集し、「おすすめ」を提供してくれる。しかし、個々に最適化された広告や情報の氾濫により、偶然もたらされる出会いの機会は相対的に減っている。「なじみの書店の店員が個人的なおすすめ文庫を紹介している。身近な人に背中を押してもらう偶然の出会いが、新たな興味のきっかけになれば」と期待する。
「ネットによって情報社会は実現した一方、情報処理に追われ、自分にぴったり合うものに出会うチャンスって、実は減っていないだろうか。何でも検索できて、ユーチューブには興味ありそうなものが出てくる。満腹感を得て知った気にはなるが、時間とともに忘れてしまう浅い刺激ではないか。情報が多すぎるが故に、強く記憶に残る体験は得られづらくなってはいないか」
大井さんはそんな疑問を投げかける。ブックオカが、人生において「ガツンとくる」本に出会うきっかけになれればと思っている。
イベント | のきなし古本市 in 福岡城 |
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日程 | 11月3日(祝)※雨天時は6日(土)に延期 |
会場 | 舞鶴公園(福岡城跡)梅園 |
時間 | 11:00 ~ 15:30 |
公式サイト | ブックオカ 公式サイト |