北九州・魚部のカフェが小倉北区にオープン 店内は自然がいっぱい

 身近な生き物や植物の魅力を発信するユニークなカフェが、北九州市小倉北区下到津5にオープンしました。水辺の生き物などを調査・研究するNPO法人「北九州・魚部」(北九州市)の「バイオフィリア」です。NPOの担当者は「一人でも多くの人に生き物ファンになってもらい、周りに残る自然を見守ってほしい」と願っています。(文:小山田昌人、写真:大野博昭)


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店内は生き物だらけ

 カフェに展示された水槽をのぞくと、小さな川魚が猛スピードで泳ぎだし、水草の陰に身を潜めました。「北部九州に分布するカゼトゲタナゴです。北九州を流れる紫川では、絶滅した可能性が高いと言われています」。NPO理事長の井上大輔さんが教えてくれました。


カゼトゲタナゴ


 水槽は四つ。水田を再現した水槽には、ミナミメダカが群れで泳いでいます。別の水槽には、朱色の腹部が特徴のアカハライモリやイシドジョウも。今は見かけなくなりましたが、子どもの頃に見たり、追いかけたりした記憶のある生き物がいます。


 家族ら5人で立ち寄った近くの小学生・吉松李緒君は「アカハライモリってかわいい。こんなに近くで見られてうれしい」と笑顔です。母の裕美さんは「店内が広く、連れてきた子どもを気にせず、落ち着いてお茶が飲めるのも魅力です」と話していました。


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自然を守れ!が出発点

 カフェを運営する魚部は1998年、高校教諭でもある井上さんが赴任先の県立北九州高校で生徒たちと創部しました。福岡県内の河川や沼の生物を調べて情報発信し、自然環境の保護に取り組んできました。市民も広く参加できる活動を目指し、2018年にNPO法人となりました。


 カフェをオープンする原点は、北九州高校の魚部の活動の中にありました。魚部の調査対象だった京築地域の沼を部員らが久しぶりに訪ねたところ、水が抜かれたままになっていたことがありました。沼そのものが埋め立てられ、生息する水辺の生き物が確認されないこともあったようです。

 魚部のOBで、現在はNPO事務局長とカフェ店長を兼務する工藤雄太さんは「どこにでもあるような沼では、そこに残されている自然環境の貴重さが伝わらず、失われてしまうことがある」と指摘します。


工藤さん


 2007年には、貴重なゲンゴロウの一種が生息する京築地域の別の沼が道路整備で埋められそうになりました。沼のほとりに普段は見かけない機材があることに部員らが気づいて計画が判明。専門家を交えて事業者側と協議した結果、沼は埋め立てを免れ、希少種を含む生物は守られました。


水槽のミナミメダカ

カワニナ


 気づかないうちに、貴重な自然環境が姿を消していく――。工藤さんは「ちょっとした変化に気づけば、自然を守ることができる。その変化に気づいてもらうためにも、身近な自然に関心を持つ生き物ファンを増やしたかった」と語ります。


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本や雑貨もいっぱい

 カフェには飼育展示だけでなく、生き物や植物の魅力を伝える本や雑貨がいっぱいです。



 店内で読める本は、芋虫やドングリ、紫川など、身の回りの生き物や自然をテーマにした数百冊。専門家による本格的な研究論文から、写真をふんだんに使った子ども向けのものまで、幅広くそろえています。



 雑貨は、ゲンゴロウやイモリ、トンボなどをかわいらしくデザインしたバッヂやステッカー、便箋、シャツ、アクセサリーなどさまざま。キノコの一種・冬虫夏草と寄生された昆虫が生きる力を競い合うボードゲームなど珍しい玩具もあります。


 専門家と交流する機会も予定されています。12月22日には、「ゲッチョ先生」の愛称で知られ、数々の著書を出している沖縄大学学長の生物研究家・盛口満さんが来店し、講演します。将来的には、来店者が近郊の里山などに出向いて生き物とふれあうフィールドワークを企画し、その窓口となることも計画しているそうです。


 店内では、手作りのパン、有機栽培された豆を焙煎したコーヒー、緑茶などの軽食のほか、養殖ドジョウの唐揚げといった一風変わった食事も楽しめます。工藤さんは「気軽に立ち寄り、食事を楽しみながら、自然の魅力に気づいてほしい」と話しています。

 営業時間は11時~20時(金、土曜は23時まで)。定休日は火曜(調査・研究のため不定期の休日も)です。問い合わせは工藤さん(080-1776-5353)へ。



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