新進女性アーティスト2人が、福岡県みやま市の旧上庄(かみのしょう)小校舎を拠点に制作した「インスタレーション(空間芸術)」作品の発表会「来し方、行く末」が、同県筑後市の九州芸文館で開かれている。2人は昨年秋からみやま市に滞在し、創作活動のワークショップを開いたり、住民にインタビューしたりして作品の構想を膨らませた。2月12日まで。
県は2022年度から、文化芸術分野で夢に向かって挑戦する若者を応援する「新進気鋭の芸術家育成事業」に取り組んでいる。「旧上庄小レジデンスプログラム2023」と銘打った今年度は、香港出身で福津市在住のソニア・チョンさんと、福津市出身でドイツ在住の友清ちさとさんが参加した。
2人はみやま市に約3か月間滞在し、トークイベントを開いて住民らと対話を重ねたり、地域の歴史や文化を学んだりしながら作品を制作。県は旧上庄小校舎内のスタジオや住居を無償貸与し、滞在中の生活費や作品の制作費も支給した。
ソニアさんは、民家から漏れる明かりに着想を得て、明かりの奥に感じられる人の存在や家、故郷の意味を探ろうと創作。プロジェクターを使い、玄関や部屋の明かりがともった約60軒の住宅を直径2メートルほどの円の形に並べ、月に模した映像をスクリーンに映し出した。住宅の映像からは生活の営みがうかがえる。
また、床に置いた6台のモニターでは、ふるさとへの思いなどを語る住民の映像を流し、「生の喜びを分かち合うコミュニティーの創造を試みた」と話す。
友清さんは、明かりを落とした会場で、みやま市特産のミカンを使ったエッセンシャルオイル(精油)作りや、住民との交流の様子などを記録した映像を大型スクリーンで上映。オレンジ色の間接照明を使ったり、校庭でたき火をした際に使ったベンチや炭などを並べたりした。
友清さんは「映像や香りも含め、空間そのものをアートとして考えた。みやま市で過ごした3か月間の創作のプロセスにも注目してほしい」と話している。
観覧無料。午前10時~午後5時。問い合わせは九州芸文館(0942-52-6435)へ。