福岡県柳川市隅町の柳川古文書館で、旧柳河藩士の家に伝わってきた甲冑(かっちゅう)や古文書を展示する企画展「甲冑の美と技」が開かれている。関係者は「甲冑は武具としてだけでなく、美術工芸の集大成ともいわれる。その美しさと技術を見てほしい」と話している。
甲冑は、かぶとや胴、手甲、すね当て、籠手(こて)など戦いの際に体を守る防具一式(領)のこと。同館は、武家の子孫らから寄託されたり、寄贈されたりした「当世具足」と呼ばれる甲冑14領を所蔵している。
美術工芸の集大成
企画展では、このうち8領を展示。初代柳河藩主・立花宗茂の侍大将として朝鮮半島に出陣した十時摂津守連貞が着用したとされる甲冑のかぶとには、銃弾が当たったとみられる痕跡が残っている。
太平の世になった江戸時代でも、藩士たちは戦いに備えて甲冑を所持し、武家の誇りとして大切にしてきた。江戸末期の1865年に作られた由布家伝来甲冑は、かぶとの前立(まえだて)に色鮮やかな「飛竜」が取り付けられているのが特徴。同館は「動乱が続いた幕末にあって、新たに甲冑を作って戦いに備えた可能性もある」としている。
また、戦いが長い期間にわたって行われなかった時代には、かぶとや胴などの武具には、皮革、漆工、組みひも、金工、染色など様々な技法が取り入れられていることも確認できる。
会場には、家柄や役職、石高によって用意する人員や武具の種類を規定した内容や、軍役の際、藩士たちが心得ておくべきことなどを記した古文書なども展示している。
レプリカの試着も
企画した中川晃一学芸員は「こうした展示は初めて。実際に使われたものや、長年、藩士の子孫が大切にしてきた甲冑を見て、多くの人に歴史への興味を深めてもらいたい」と期待していた。
期間中は、立花宗茂・千代(ぎんちよ)夫婦をテーマにした大河ドラマ招致に活用している武具のレプリカを無料で着用することができる。
会期は2025年2月2日まで。開館時間は午前9時半~午後4時半。入館無料。月曜と年末年始(12月28日~1月4日)は休館で、月曜日が祝日の場合は翌日休館。問い合わせは、柳川古文書館(0944-72-1037)へ。