SNS、クラウドファンディングで消費者を味方に福岡の中小企業が新たな挑戦

市場のニーズをSNSで探り、新規事業に挑む佐藤工業所の佐藤代表

記事 INDEX

  • ニーズを知ればこわくない?
  • 消費者の声を聞きながら開発
  • 手応えをつかんでから商品化

 SNSや購入型クラウドファンディング(CF)を市場調査やテスト販売に活用する動きが福岡県内の中小企業で広がっている。消費者の反応を確かめて商品設計に反映でき、量産後に売れ残るリスクも減らせることが新規事業への挑戦を後押ししている。

消費者の声を聞きながら開発

 ユニットバスの架台が主力製品の佐藤工業所(筑紫野市)は、軽自動車で使える組み立て式ベッド「車中泊キット」の年内発売を目指す。開発段階でフェイスブックを活用し、昨年秋に「車中泊」をテーマにグループを作成すると1万4000人超が集まった。試作品の写真を公開し、「もう少し横幅が欲しい」など多くの助言を受けた。

 同社は売上高の9割を大手住設メーカーに依存してきた。「いつかはメーカーに脱皮したい」との思いを募らせていたところ、キャンプ人気もあり「車中泊」の愛好家が増えていることに着目し、金属加工技術を生かせるとして開発をスタートさせた。


車内に平らなスペースをつくる車中泊キット


 試作を重ねるうち、熟練の社員からも様々な改善のアイデアが出る。佐藤晃寿代表は「新たな挑戦は社員のモチベーションにもつながっている」と、社内の活気に手ごたえを感じている。

 これまでの仕事は企業が相手で、一般の消費者向けは初めて。どこに需要があるのかがつかめず、当初はミニバン用を計画したが、SNSでアンケートを取るなどして、軽自動車用の競合が少ないことを知った。

 「SNSにたくさんの参加者が集まって驚いた。消費者の意見を聞け、事業化の決心がついた」と佐藤代表。発売する際には、フェイスブックのグループで告知するなどして、マーケティングにも生かしていく考えだ。


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手応えをつかんでから商品化

 アイデア段階で需要が把握できる購入型CFを使う例も増えている。コンサルタント業のプラスアルファ(直方市)は、膝下にポケットを付けた「スタジアムパンツ」を商品化し、CFサイト「マクアケ」に出品した。


スマホを出し入れしやすいポケットが人気になったズボン

 目標の30万円に届けば製造する計画だったが、座った状態でもスマートフォンを出し入れしやすい特徴が注目され、145万円が集まった。2回のCFを合わせて349本が売れ、9月からはネットで直販できるようになった。

 消費者の反応がわからないまま量産するリスクを避け、初期費用は百数十万円に抑えられたという。高嶋正治社長は「アイデアだけでは売れるか分からず、この仕組みがなければ挑戦できなかった」と話す。

 食品販売のプレ(太宰府市)もレトルトカレー「太宰府カレー合格」の商品化を目指し、マクアケに出品している。山田英智社長は「まずはネットで反応を確かめたい」という。


商品化に向けてCFで反応を確かめている「太宰府カレー合格」

 マクアケの新商品の新規掲載数は今年4~6月に前年より7割増えており、「大半が中小企業の商品。新規事業の相談が多い」という。こうした販売手法の拡大は、コロナ禍の「巣ごもり消費」によるネット販売の増加も背景にある。


ライブコマースで販路拡大を目指す鉢植え


 植木を生産・販売する金華園(久留米市)は8月から、生配信のネット動画で商品を紹介するライブコマースに挑戦している。二又朋則代表が出演して、アガベやバジルの鉢植えなどを全国に売り込む。二又代表は「スマホ1台あれば、場所にかかわらず全国に販路を拡大できる」と新たなチャンスに期待している。


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