うまさの決め手は人間味? 人気店が師と仰ぐ「スパイスのカリスマ」に会ってきた 

 「スパイスのカリスマ」「カレーの伝道師」などの異名を持つ男性に、ある疑問をぶつけるため、福岡市中央区に会いに行きました。真相解明には至りませんでしたが、カレーとの出会いやスパイスへの熱い思いをたっぷりと聞くことができました。

いざ!「薬院スパイス」へ


アパート1階にある「薬院スパイス」

 中央区薬院に立つアパートの1室にある「薬院スパイス」へ。フォトジェニックな装いで現れたのは、店主の高田健一郎さんです。


高田健一郎さん。Tシャツには「スパイスの穴」

 薬院スパイスでは、カレーやコーラに用いるスパイスを販売しているほか、カレー作りを学びたい人に「魁!!カレー塾」を開講しています。時にテイクアウトを受け付け、グルメイベントに出店することもあるそうです。


地下鉄の「薬院駅」と「薬院大通駅」のマークから着想を得たイラスト

 薬鉢を持ってニッコリ笑う象のイラストがついた「クラフトコーラ」は、高田さんお手製のキット。内包されたスパイスをグツグツ煮て原液を作り、砂糖を加えて炭酸水で割ると、天然原料のコーラが完成します。


自宅で手軽に作ることができるコーラ

 高田さんに確かめたかったのは、SNSなどで目にする「片頭痛にはコーラがきく」は本当なの?――ということ。 糖分やカフェインの摂取によって改善される痛みもあるようですが、コーラにそんな効果があるのでしょうか。

 世界中で飲まれている「コカ・コーラ」や「ペプシ・コーラ」も、もとは薬剤師が調合した栄養ドリンクとして薬局で売られていたもの。象のイラストがほほ笑む高田さんのコーラで片頭痛が治るのかを尋ねると、カリスマは首をかしげます。

 原材料のカルダモンには精神を安定させるリラックス効果、ナツメグやクローブは鎮痛作用、シナモンは体を温める働きがあるそうですが、確実なことはいえません。


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福岡スパイスカレーの草分け

 福岡市東区出身の高田さん。10代から放浪を重ね、20歳を過ぎると海外を渡り歩くようになったそうです。26歳の頃、旅先でマレーシア人に振る舞われたカレーの味に衝撃を受け、『この味を忘れるな』という"天のお告げ"を授かったと話します。


異国情緒あふれる薬院スパイスの"住人"

 やがて三十路を迎えた高田さんは、定職に就こうと就職活動に打ち込みますが、いわゆる「35歳の壁」にも阻まれ、なかなか採用に至りません。職探しへの熱意は次第にしぼみ、自己否定を繰り返すことが増えていったそうです。


「人生に迷ったら、カレー屋になるといいですよ」

 「スッと社会になじめればいいんだけど、僕は組織で浮くタイプ。だったらもう、自分が無理なく独立してやっていける数坪の"国"をつくろうと思ったんです」

 「一番開業しやすそう」と思った飲食の道を選び、あのカレーの記憶をたどりながら、「スパイスロード」の看板で移動販売を始めました。おいしさが評判を呼び、行列が連日絶えない人気に。ほどなく同名の店舗を中央区に構えることになります。


高田さんが調合したスパイス

 高田さんの探求心はとどまるところを知りません。店を切り盛りしながら、さらにうまいカレーを求め、食べ歩きや研究にいそしむ日々。カレー修業でインドやオーストラリアを巡り、その最終地点でようやく理想に合致する味と出会います。

 レシピを持ち帰って店で提供をはじめますが、調理法を店内に貼り出して公開。アドバイスを求める他店のオーナーにも、惜しみなくコツを伝授しました。高田さんのカレーに胃袋をつかまれた人たちは、彼を「スパイスのカリスマ」「カレーの伝道師」と呼び、福岡の繁盛店で「師匠は高田さん」と言う店主は少なくありません。

からだが喜ぶスパイスを!

 多忙な生活を送ってきた高田さんは数年前、大病を患います。手術と療養のため、スパイスロードはカレー店の経験を持つ知人に譲渡。体重は一時40キロ台まで落ちましたが、現在は回復に向かっています。


 「自分が受けたご利益を社会に還元するのが役割」と謙虚に語る高田さん。いわく「逆・蜘蛛(くも)の糸」が生きるテーマだそうです。「糸が垂れてきたら他の人に譲る。そうすると、一周回って自分のところへ還(かえ)ってくる」。この生き方を貫かないと、幾度となく助けられたお告げも降りてこなくなるといいます。


見た目のインパクトとは違い、とても控えめな高田さん

 開発したレシピはカレー塾でもたびたび披露。また、障がい者施設へスパイスの調合法を伝授し、施設のオリジナル商品として出せるよう準備を進めているそうです。


検定試験の勉強で壁に貼り出した用語

 最近また新たなカレーと出会ったと笑顔を見せる高田さん。スパイスの検定試験で専門的な知識も身につけて"スパイス愛"に一層磨きがかかります。

 「どれもこれも自分の力ではないんです」と始終謙遜し、肩の力が抜けた自然体で人生を楽しむ余裕が印象的でした。不思議な魅力と、スパイスの奥深さに触れたい方は、一度訪ねてみることをおすすめします。


「薬院スパイス」の入り口



店名 薬院スパイス
所在地 福岡市中央区薬院1-14-21
白石第2アパート16号
公式サイト 薬院スパイス


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