電動キックスケーターに無線でチャージ 「走りながら」を目指して福岡で実証実験

マリノアシティに設置された無線充電スポット(左)と電動キックスケーター

記事 INDEX

  • マリノアシティに無線充電スポット
  • EV時代を支える社会インフラに!
  • 電動スケーター普及の追い風にも

 大手ゼネコンの大成建設が、非接触の無線給電技術で電動キックスケーターに充電する実証実験を福岡市西区の商業施設「マリノアシティ福岡」で行っています。同社は、電気自動車(EV)が道路を走りながら充電する革新的な技術の確立を目指しており、本格的な電動モビリティー社会に向けた研究の一端が福岡で披露されています。

マリノアシティに無線充電スポット

 実験中の無線充電は、路面の下に給電機器を埋め込み、路上を走るEV側には受電機器を取り付けることで、ケーブルなどを使わずに充電ができる技術です。スマートフォンなどで実用化されているワイヤレス充電を大型化したイメージになります。

 今回の実験は、福岡市で電動キックスケーターのシェアリングサービスを展開する「mobby ride」とマリノアシティの協力で実施。施設内1か所に無線による充電スポットが設置されており、そこにキックスケーターを止めると充電が自動でスタートします。

 マリノアシティでの実証実験は1月30日までで、充電スポットでのシステムの安定性などを検証します。期間中は土曜・日曜限定で、キックスケーターの試乗体験会も開きます。


無線でEVに給電する道路のイメージ(提供:大成建設)

 今回の実験は、停車中に充電を行いますが、この給電システムを道路に敷き詰めれば、走行中のEVへの充電も可能になるといいます。


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EV社会を支えるインフラに!

 大成建設は今回、路面に設置する太陽光発電システムも持ち込みました。開発中の太陽光発電システムと無線給電機器によって、走行中充電が可能な社会インフラが整備できると期待し、2030年までの技術確立を目指しています。


道路に埋め込むタイプの太陽光発電設備。実用化に向け開発を進めている

 大成建設の新領域技術開発室次長・遠藤哲夫さんは「充電しながら走行できるので、小さなバッテリーでもEVの航続距離を伸ばせます」と説明。乗用車に加えて、トラックやバスといった大型車両での利用を見込み、将来的には無線充電レーンを併設した道路の整備も想定しています。


走行中の充電が可能な道路インフラのイメージ(提供:大成建設)

電動スケーター普及の追い風にも

 実験に加わっているmobby rideは、無線充電技術が電動キックスケーター普及の鍵を握るとみて、開発の行方に関心を寄せています。同社では、貸し出したスケーターのバッテリーを回収して充電しており、その作業がスタッフの負担になっています。実用化されれば、利用者がスケーターを無線充電スポットに返却するだけで、すぐに充電が始まります。


mobbyの電動キックスケーター。フル充電で約55キロ走行できる


 スタッフの労力を減らせ、スケーターの稼働率向上も見込める新技術。mobby rideの安宅秀一代表は「充電の手間は大きな課題になっていますが、無線充電が実用化できれば、収益性も上がる可能性があります。走行中も充電できるようになれば、手軽なモビリティーとしての利便性も大幅に高まるのでは」と期待しています。


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