日本の人形を世界のアートに
――独自の作風には、中村さんの人形師としての矜持があったんですね。
「江戸期の人形師が現代にタイムスリップしたら」というのがコンセプトです。例えば、大リーグで活躍する大谷翔平選手を当時の人が見たらどう思うか。大谷選手に対する現代人の目も踏まえると、やはり桃太郎に抱く「強い」「憧れ」「たくましい」という感想と同じものを感じると思います。
――人形師をやっていて良かったと思う瞬間は?
やはり、注文を受けて人形を作るときですね。相手に喜んでもらえる人形はどんなものだろう、依頼者の祈りを込めるのにふさわしい人形にするにはどうしたらよいか。そんなことを考えていると、ヒリヒリとした緊張感が出てきて、人形師としての「本懐」を感じます。
――海外への出展については?
やはり、日本の人形を「アート」として見てもらいたいです。日本人が人形を見て感じるように、海外の人にも感じてほしい。そのためには、「日本人は人形に特別な思いを込める」というストーリーと一緒に見てもらうことが大事だと思います。
――博多人形をもっと世界に広めたいですね。
実は、私の人形は純粋な博多人形というわけではありません。制作方法のほとんどは博多人形ですが、顔は御所人形、体の装飾は嵯峨人形を取り入れています。世界で日本の人形の良さを伝えるためには、いろんな技法の良いとこ取りをして「日本人形」として伝えるのが良いと思っています。そうやって、海外の人が日本を知るきっかけになれば。それが私の願いです。