「Y氏は暇人」山田孝之さんが古本屋オーナーに ただいま準備中!

「ふるほん住吉」のオープンに向けて準備を進める山田さん

記事 INDEX

  • 長年の「憧れ」に挑戦!
  • クリエイティブに異変
  • AIにはできないことを

 Y氏の名前で著書を出し、日常の「あるある」を描くイラストレーター・山田全自動として活動する山田孝之さんが、福岡市博多区住吉で古本屋をオープンする準備を進めています。今なぜ古本屋を? 山田さんに思いを聞きました。

長年の「憧れ」に挑戦!

 精華女子高校のそばにある10坪ほどの空き店舗。3月中旬に訪れてみると、壁際などに本棚を配置する作業が着々と進んでいました。ここが、4月中のオープンを目指す山田さんの古本屋「ふるほん住吉」です。


「ふるほん住吉」(右)と周辺の街並み

 以前はカフェだった内装を生かし、レトロな雰囲気の店づくりを進めています。準備で大忙しの山田さんは「出店を決めてから毎日楽しいことばかり。街の雰囲気も気に入り、ワクワク感でいっぱいです」と笑顔を見せます。


「ワクワク感でいっぱいです」


 本が大好きな山田さん。「新刊、古書を問わず毎日のように本屋さんに通っています」と話します。古本屋で昔の地図や絵はがきなどを見つけて収集するのも楽しみで、自分で古本屋を営むことにかねて憧れていたそうです。


山田さんが手書きした店内のレイアウト


 出店を決断したのは2023年10月。店を構える物件を探し、古本屋の営業に必要な古物商の許可も12月に取得しました。古本市に足を運び、店に並べる本の仕入れも進めています。


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クリエイティブに異変

 山田さんは福岡市内でウェブデザイン会社を営みながら郷土史を研究し、Y氏を名乗って、街角のあまり知られていない史跡などをSNSやブログで発信してきました。「福岡路上遺産」「福岡穴場観光」といった著書も好評です。


ブログ「山田全自動のあるある日記」

 デザインの勉強になればと、タブレット端末とタッチペンで描き始めた江戸の町人風のイラストが注目され、口語で日常を詠んだ福岡の俳人・吉岡禅寺洞(ぜんじどう)(1889~1961年)にちなみ、「全自動」の名でイラストに力を入れるように。ブログのほか、16年に始めたインスタグラムはフォロワーが100万人を超えています。


「あるある」を描いたイラスト(山田さん提供)


 デジタルを駆使した仕事に携わるからこそ、近年の生成AI(人工知能)の目覚ましい進化を肌で感じているそうです。「クリエイティブな仕事が誰にでもできるようになりつつある。生成AIにつくらせ、その中から良いものを選ぶやり方に変わっていくのでは」と山田さん。現在の仕事を辞めるわけではありませんが、クリエイティブの”やりがい”が薄れていくことを危惧しているといいます。


思わずクスッと笑ってしまう(山田さん提供)


AIにはできないことを

 そこで新たな可能性を見いだしたのが古本屋でした。「リアルな空間と、実物に価値がある古本。いずれもAIにはつくり出すことができません。古本屋は複数の仕事で生計を立てる『複業』に合っている」と説明します。


憧れを現実に。改修が進む店内(3月12日撮影)

 ネット古本屋も検討したそうですが、手間も時間もかかるリアル店舗を選択しました。「失敗したとしても、得られるものは大きいはず。実店舗を構えることで学びや人とのつながりが生まれる」と前向きです。


懐かしい携帯ゲーム機も販売する予定


 店はジャンルを特定せずに、多種多様な約2万冊をバランスよくそろえる予定です。「ふるほん住吉」のキーワードは「エモい」。古地図や絵はがき、古い年代の漫画のほか、懐かしいカセットテープやゲーム機、民芸品なども並べ、なにが喜んでもらえるのか、いろいろ試していく考えです。


この棚におすすめの古本を並べる

 周辺には、昭和のかおりが漂うパン店や飲食店などがあり、街の雰囲気に溶け込んだ古本屋さんを目指します。「店も自分自身もゆっくりと、のんびりと歩んでいければ」と山田さん。「街を散策する途中に立ち寄ってお気に入りの本を見つけ、近くの喫茶店で読んでもらえればうれしいです」と笑顔で語ります。

ふるほん住吉
【所在地】福岡市博多区住吉4-14-3
【オープン】4月中(予定)
【営業時間】11:00~18:30(予定)
【定休日】火曜(予定)


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