「ラーケーション」で九州へ!観光機構が学生アイデアを事業化

コンテストでアイデアを説明する中村さん(2024年12月、福岡市で)

 一般社団法人の九州観光機構(福岡市)が、2022年から毎年開いている「学生対抗九州観光ビジネスプランコンテスト」に出場した学生のアイデアを初めて事業化した。全国で導入が広がる自主校外学習制度「ラーケーション」で九州を訪れる旅行者にモデルコースなどを紹介する事業で、9月16日に専用サイトを開設した。

ラーケーション 「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、親などと校外で学習体験を深めるために学校を休んでも欠席にならない制度。2023年度に愛知県が年3日を上限に導入し、熊本や山口、沖縄県、大分県別府市などにも広がっている。

目的に合わせオススメ紹介

 サイトではトヨタ自動車九州の工場見学や屋久島の自然といった九州7県の学習スポットなどへのアクセス方法のほか、長崎県島原地域で潜伏キリシタンの歴史を学ぶコースなど約20のモデルコースを示す。JTB、日本旅行、じゃらんと提携し、専用サイト経由で旅行を手配すれば負担する費用に応じて最大5万円の割引クーポンを受け取れるキャンペーンも実施する。


九州観光機構が開設した「ラーケーション」のサイト


 発案したのは24年のコンテストで最優秀賞を獲得した中村学園大4年の中村萌久珠(めぐみ)さん。新聞でラーケーションを知った中村さんは「どこに、何を学びに行けばいいか悩む親は多いはず」と考え、専用サイトでキーワードを選択すると史跡や資料館などを巡るプランが示され、旅行も手配できるサービスを提案していた。

 中村さんは「まさか、自分のアイデアが実現するとは思っていなかった。ラーケーションを広く活用してもらい、九州の観光客が増えればうれしい」と喜ぶ。

「観光業を担う人材を育成」

 九州の観光業の活性化に取り組む機構は22年から、学生のアイデアを施策に生かそうとコンテストを実施してきた。これまでの3回で全国の大学、短大、専門学校から計166チームが参加し、提案にとどまらず、実現に向けた活動を続ける学生たちもいる。

 24年の大会に出場した東海大熊本キャンパスのチームは、葬儀社で使用済みのロウソクを回収し、観光イベントの竹灯籠に利用するプランを提案。この秋、大分県竹田市で開かれるイベントで実証する計画だ。修学旅行に観光業や農業の就業体験を盛り込むプランを提案した福岡大のチームも旅館と協力して内容の練り上げを続けている。


「学生対抗九州観光ビジネスプランコンテスト」のサイト


 就職後も観光に関わる人材も出てきた。23年にイデアITカレッジ阿蘇から出場した藤川大翔さんは、卒業後に同校発の新興企業に就職。提案した訪日客に多いビーガン(完全菜食主義者)向け料理をホテルや飲食店に配食するプランを引き継ぎ、道の駅などと市場調査やメニュー開発を進めている。中村学園大の中村さんも、「コンテストで観光業界に興味を持った」といいレジャー関連企業に進む予定だ。

 機構の唐池恒二会長(JR九州相談役)は「観光業に関心を持ってもらい、将来を担う人材の育成にもつなげるため、今後もコンテストを継続したい」と話している。


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