廃棄物を付加価値で再生!福岡でも広がる「アップサイクル」

捨てるはずのものを付加価値で生まれ変わらせた商品

記事 INDEX

  • 背景に環境配慮も
  • 資源も思いも循環
  • 切れ端から新商品

 捨てるはずのものを生まれ変わらせる「アップサイクル」の取り組みが広がっている。環境意識の高まりを背景に魅力的な商品が福岡県内でも次々に登場しており、お気に入りが見つかりそうだ。

背景に環境配慮も

 バラやガーベラ、ケイトウなどの花々で飾り付けられた華やかなキャンドル。実は、規格外で流通させられない花や、生花店や結婚式場で廃棄する予定だった花を活用している。


「廃材は誰かの宝になります」と語る中西さん


 制作するのは、久留米市の「ippo(イッポ)アップサイクル」の中西恵さん。2年前まで地域情報誌の編集長だったが、コロナ禍で廃刊になった後、新たな活動としてアップサイクルに着目した。元々アクセサリー作りなどが趣味で、作る過程で多くのごみを出すことに違和感を感じていたことがきっかけ。「筑後地方で工芸品などを取材した際にも廃材の多さを目にしており、活用できるのではと思い立った」と説明する。


 キャンドルのろうは、八女市のろうそく工場から出る切れ端などを利用。生花だけでなく、久留米絣(かすり)の染めの過程で使う「くくり糸」などの廃材もキャンドルを装飾する材料にしている。


久留米絣の「くくり糸」を活用したキャンドル


 1点2200円からで、主に県内外の百貨店に期間限定で出店し、キャンドル作りのワークショップも開く。「社会課題を考えるきっかけになればうれしい」と力を込める。


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資源も思いも循環

 東京都立産業技術大学院大の越水重臣教授(品質工学)によると、アップサイクルは、1994年にドイツで提唱された概念。単に廃材を再利用するだけでなく、高い品質やデザイン、独自性が求められ、感動や共感を呼ぶようなストーリー性が付加価値となることも特徴だ。

 越水さんは「資源だけでなく、『思い』も循環させる。アイデアとスキルがあれば個人でも取り組みやすく、今後さらに広まるのでは」と話す。

切れ端から新商品

 筑後市の就労継続支援A型事業所「ディアスポラ」は、廃車のシートベルトを活用したバッグを制作している。3万円から。


廃車のシートベルトなどを用いて作られたバッグ

 シートベルトは車の解体工場から入手し、ビジネスバッグやボディーバッグなどに加工。シートベルトのほか、エアバッグを内張にしたり、座席のレザーを持ち手に用いたりしており、車好きの人らに評判という。

 福岡市の博多マルイ内の革小物店「necto」、志免町の板金塗装業「C・P・M」などで販売。マイカーを廃車にする人などからのオーダーメイドも受けており、「愛車の思い出に」と注文が入るという。ディアスポラ代表の新城孝明さんは「捨てられる物も、見方を変えれば価値ある物になる」と説明する。


生まれ変わった商品


 創業170年のイ草の製造・卸会社「山万」(筑後市)は、畳などを製造する過程で出るイ草の切れ端でベビーカー用のシート(5766円)やバッグ(5390円)などを制作し、「furte.u(フレッテ)」のブランド名で販売している。


「伝統のあるイ草産業の継承につなげたい」と語る松田さん


 イ草の切れ端は短くて加工しにくく、これまで焼却処分していた。イ草の新商品を検討した際、切れ端を粉にして紙に加工することも検討したが、商品開発に協力する久留米市の会社「GENUINE. planning(ジェヌイン・プランニング)」の松田ひかり社長が、「紙への加工では化学物質や二酸化炭素が発生する。短いイ草をサイズの小さい物に活用すれば環境への負荷を減らせる」と提案。ベビーカーシートを選んだのは若い世代にイ草の手触りや香りを知ってほしいとの思いからで、孫への贈り物に購入する人も多いそうだ。


イ草の切れ端を活用した消臭剤

 松田さんは「買う側も、環境に配慮した商品を使うことに喜びを感じてもらえるのでは」と期待する。


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