夏休みが終わり、新学期が始まる時期に合わせ、福岡県宗像市の県立少年自然の家「玄海の家」が、不登校や引きこもりの児童生徒が安心して自分のペースで過ごすことができる場として施設を提供する独自の支援を始めた。単なる居場所ではなく、閉じこもりがちな自宅から一歩足を踏み出すきっかけとなる「出場所」を目指す。
希望日時に「ちょっと」訪れ
発案したのは、所長の桂木俊樹さん。昨年秋、玄海の家が主催したキャンプに不登校の児童が参加した。その後、学校に通うようになったといい、桂木さんは「玄界灘やさつき松原の自然に囲まれて過ごした時間と経験が、心のエネルギーを刺激したのではないか」と考えた。
それを機に企画したのが、不登校や引きこもりの児童生徒を対象にした「~Chot GKI~ちょっと『玄海の家』に行ってみよう!大作戦」。施設見学や面談、体験利用を経てスタートし、原則として、休所日や祝日を除く火曜から金曜の午前10時~午後3時半の希望する日時に「ちょっと」訪れ、読書やゲーム、工作、勉強など好きなことをして過ごす。職員の作業の手伝いや、目の前に広がる浜で漂着したごみを集めるボランティアをしてもいい。
桂木さんや、小中学校、養護の教員免許を持つ職員らが見守るが、「どうして学校に行かないの」「行った方がいい」といった、焦りを招くような働きかけは一切しない。
活動内容や様子、変化について保護者や学校と共有し、施設で過ごした日は出席扱いにするよう学校長に依頼する。これまでに地元の宗像市と、近隣の同県福津市、同県岡垣町の教育委員会や校長会に協力を要請した。
周辺自治体の児童生徒を想定しているが、自力で通ったり、保護者が送迎したりできれば、居住地は問わない。原則以外の日時に要望があった場合もできる範囲で受け入れる方針で、費用は体験活動などで実費が生じた場合を除き無料だ。
一歩踏み出す「出場所」に
県教委によると、2021年度の小中学生の不登校は1万2069人に上り、増加傾向にあるという。夏休みが終わり、新学期が始まるこの時期は不登校や自ら命を絶つケースが増えるとの指摘もある。
すでに複数の申し込みがあり、面談も実施。桂木さんは「不登校の問題に学校教育だけで対応するのではなく、社会教育の力を発揮する挑戦」と位置付け、「家から出るきっかけとなる出場所を目指す。子どもたちが『ちょっと行ってみようか』と一歩踏み出せるような出場所が、他の社会教育施設や公民館などに広がっていけば」と話す。
申し込み、問い合わせは玄海の家(0940-62-2511)へ。