大島の子ども6人が高齢女性を救助 親族が感謝の訪問
福岡県宗像市の離島・大島の義務教育学校「市立大島学園」の生徒と児童6人が、溝に転落して長時間抜け出せなくなり、雨に打たれて衰弱していた高齢女性を救った。女性は腰の辺りを圧迫骨折し、現在も福岡市内の病院に入院している。親族が島を訪れて子どもたちと対面し、感謝を伝えた。
協力して体を温め、大人を呼ぶ
学校などによると、12月11日午前8時前、登校中の8年(中学2年)丸井琉星君(13)、7年(同1年)佐藤来飛君(13)がうめき声に気付いた。田んぼ脇の溝をのぞき込むと、高齢の女性が横向きにうずくまり、体を震わせていた。
女性は島で独り暮らしをしている藤田清子さん(82)。目がかなり悪い。
2人が「大丈夫ですか」と声を掛けると、小声で「大丈夫」と返ってきたが、雨で全身がぬれ、泥だらけ。両足ははだしだった。
9年(同3年)の古城梨央菜さん(14)が「握ってください」と傘を差し出し、引っ張って正面に体の向きを変え、自分のカイロを手渡した。
3人で手を握って引き上げようとしたが、コンクリートと草地ののり面からさらに1メートル以上の深さがあり、藤田さんも体に力が入らないようだった。そこに通りかかった6年草野奏色さん(12)が震えている藤田さんに自分のマフラーを巻き、丸井君の妹で5年の結月さん(11)、佐藤君の妹で4年の愛莉さん(9)が大人や先生を呼びに走った。
駆け付けた消防団員や警察官らが藤田さんを引き上げ、島の診療所へ運んだが、体温が著しく低下。海上タクシーが出払っていたため、友人の平川かずよさん(75)が付き添い、フェリーと救急車でリレーして福岡市東区の病院へ搬送した。
「生きていてくれて、ありがとう」
15日、福岡県福智町に住む藤田さんの兄・香月浄司さん(84)と妻一恵さん(77)、平川さんが学園を訪問し、6人と対面。香月さんはけがの状態などを説明し、「命を助けてもらって、ありがとうございました」と何度も頭を下げた。
香月さんによると、藤田さんは「夜のうちに落ちた」と話しているというが、前夜にはだしで歩いていた藤田さんに気付いた住民が自宅まで2度送っていったといい、いつ転落したのかは特定できていない。少なくとも数時間は溝の中にいたとみられ、溝を覆っていた雑草を刈ったばかりだったことが発見につながり、冷え込みが厳しくなかったことも功を奏したと島の人たちは話す。
丸井君は「子どもでも命を助けられることが分かった」、古城さんは「戸惑ったが、たくさんの大人が駆け付けてくれて、助かる希望が見えた」と振り返る。
治療とリハビリを終えた藤田さんが島に帰ってきたら、佐藤君はこう声を掛けたいという。
「生きていてくれて、ありがとうございます」