ウイスキー造りに挑む朝倉市の老舗蔵元が蒸留所ツアーを開始

熟成中のウイスキー樽が並ぶ貯蔵庫

記事 INDEX

  • 親子の思いで新しい道へ
  • こだわりを現場で体感!
  • ショップでも楽しい時間

 福岡県朝倉市にある老舗蔵元「篠崎」のウイスキー蒸留所を見学するツアーが8月から始まりました。「ウイスキーの愛好家に蒸留所のことを知ってもらい、詳しくない人も興味を持ってくれるきっかけになれば」と担当者。ツアーに参加すると、ウイスキー造りに挑む現場の熱い思いとこだわりに触れることができます。

親子の思いで新しい道へ

 篠崎は江戸時代の文化文政期(1804~30年)に創業。日本酒や焼酎のほか、時代のニーズをとらえながらリキュールやジンなど様々な酒類を製造してきました。2021年8月にクラフトウイスキー造りを本格的に始め、25年春に初出荷を迎える予定です。


ウイスキー造りのために整備した新道蒸溜所

 クラフトウイスキー造りは、先代社長・篠崎博之さんと8代目・倫明さん親子の思いで始まりました。倫明さんは幼い頃、化学者・高峰譲吉(1854~1922年)の話を博之さんからたびたび聞かされたそうです。

 高峰は、米国の酒造会社で麹(こうじ)を用いた独創的なウイスキー造りに挑戦。博之さんは、従来の手法や考え方にとらわれることなく、科学的根拠に基づいて道を追求する高峰の姿勢に感銘を受けたそうです。博之さん自身も、麹を使った甘酒や、樽(たる)で熟成する麦焼酎など、酒造りの現場で革新的な取り組みを進めてきました。


ウイスキーの原料になる麦芽


 チャレンジ精神は倫明さんにも受け継がれ、経験のないウイスキーを造ることに。蒸留の著名な専門家に師事し、原料の処理から糖化、もろみの育成、蒸留と各工程で科学的根拠を重視。篠崎本社から500メートルほどの場所に整備した「新道蒸溜所」は、地区名「新道」に由来するほか、「ウイスキー造りの新しい道をつくる」との思いが込められています。


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こだわりを現場で体感!

 「原料の麦芽はウイスキーの本場・スコットランドから輸入したものです」「1トンの麦芽から一番濾過(ろか)と二番濾過で5800リットルの麦汁をとります」――。


特注の蒸留器


 8月下旬に行われたツアーでは、篠崎の営業部次長・梅野尚平さんが製造の流れを解説しながら蒸留所を案内しました。参加者は蒸留器の近くでウイスキー造りのこだわりを聞いたり、樽が並ぶ貯蔵庫で写真を撮ったりして、現場の独特な雰囲気を楽しみました。


 梅野さんは「すべてを知ってもらい、新道蒸溜所のファンを一人でも多くつくりたい」と、ツアーの狙いを語ります。


貯蔵庫を案内する梅野さん

 ツアーの最後には、木樽で熟成中のサンプルを試飲できます。飲み比べると、熟成期間による味の変化、樽によって異なる香りの特性などを感じることができます。車で訪れた人には、持ち帰り用のセットを用意しています。


熟成中のサンプルを試飲できる

 ツアーは事前予約制(1回10人まで)で、火曜と金曜の13時から行います。参加費は大人1人5000円(税込み)で、中学生~20歳未満は1000円、小学生以下は無料です。

ショップでも楽しい時間

 敷地内にあるコンセプトショップ「SHINDO LAB STAND」もおすすめです。「国菊あまざけ」など篠崎を代表する商品のほか、日本酒をブレンドしたソーセージなどを販売。お酒にまつわる情報も発信しています。


敷地内にある「SHINDO LAB STAND」

 店内では、樽に取り付けたガラスシリンダーでウイスキーを瓶詰めするハンドフィル体験もできます。1本1万1000円(500ミリ・リットル)で、自分の手で樽から詰めた”特別なボトル”を持ち帰れます。


ハンドフィル体験もできる


 ハンドフィル体験は、ショップの営業時間(10~16時、水曜と木曜は定休)に受け付けています。樽のウイスキーは時期によってブレンドが変わり、「SHINDO LAB」の公式インスタグラムで紹介しています。



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