あこがれが手に入る! 福岡市にできた「買える化石博物館」

店の中央でひときわ存在感を放つケブカサイの化石

記事 INDEX

  • けやき通りに"新名所"
  • 海外からもやって来る
  • 幼い頃の夢がかなう!

 福岡市に今夏登場した「買える化石博物館」が、国内でも珍しい化石専門店として注目されている。北海道で発掘されたという500円弱のアンモナイトから、高級外車が買えるほど高価なものまで、店内に展示されたすべての化石を販売しており、大迫力のレプリカも並んでいる。この"入館無料の博物館"に出かけてみた。

けやき通りに"新名所"


けやき通りに面した"博物館"


 店があるのは、中央区赤坂のけやき通り沿いにあるマンションの1階。落ち葉が舞い、おしゃれな洋服店などが並ぶ歩道で、目に飛び込んできたのは、大きなガラス窓の向こうで存在感を放つ恐竜の化石だった。


通りからガラス越しに店内がよく見える


 店の中央には、ロシアの永久凍土から発掘されたという4万年前のケブカサイの化石が据えられている。その周囲に約50種・数百点の化石が配置され、スポットライトを浴びていた。


落ち葉舞うけやき通り


 恐竜イベントの開催時や博物館の土産コーナーで販売されることもある化石だが、専門店は国内にほとんどないようだ。オーナーの男性が福岡に移住したのをきっかけに始めたという。


宙に掲げられた翼竜のレプリカ


 科学や生物に関心があり、“アマチュア”として化石を集めていたというオーナー。福岡での新生活スタートを機に、なにか商売を始めようと考えた。「カフェやバーはたくさんあるから面白くない。せっかくなら、福岡の新名所となるような場所にしたい」と趣味を生かせる化石専門店に挑戦した。


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海外からもやって来る

 「はじめの1年は、店の存在を知ってもらえれば」とゆっくり構えていた。8月のオープン前からSNSでの発信を始めると、情報を知った全国の恐竜ファンが開店を待ちわびており、「驚きました」と話す。


ケブカサイの大きな口をのぞきこむ


 「福岡に来ないと手に入らない、そんな店を」――。構想が当たり、国の内外からファンがやって来る。店内には、ネットで知り、シンガポールから訪ねてきた親子の姿も。ルカル君(10)は両親と相談しながら30分くらい悩んで1万円ほどのアンモナイトの化石を購入。「店では興奮しっぱなしでした」とはにかみながら話してくれた。


30分ほど悩んでアンモナイトの化石を購入したルカル君


 下校時間になると、ランドセルを背負った児童たちが次々に立ち寄る。「新しい化石が入っていないかなぁ」。毎日のように通っているという小学4年の男児はお小遣いで、古代の小さなサメの歯を買ったことがあるという。「もっとお金があれば、メガロドンという名前の大きなサメの歯を買いたいな」


下校時、店に立ち寄る児童たち


 店の2階には、人気の肉食恐竜・ティラノサウルスやトリケラトプスの大きな頭部骨格のレプリカが並ぶ。レプリカは、注文を受けてからドイツの職人に製作を依頼し、引き渡しまでに3か月ほどかかるそうだ。


迫力満点!ティラノサウルスの骨格のレプリカ


幼い頃の夢がかなう!


 評判の背景には「本物にこだわること」があるようだ。ネットでの購入に不安を感じる人も多い化石の世界。店ではアメリカの発掘者と直接やりとりし、信頼できる海外のディーラーを通して仕入れる。ネットでは販売せず、値段も店を訪れた人に店頭で伝えて、対応している。


階段にはアンモナイトの化石を埋め込んだ


 開店から3か月が過ぎ、「意外なものが人気で驚きました」という。それは魚の化石。絶滅した恐竜や、ほかの爬虫(はちゅう)類とは違い、はるか昔から現在まで劇的な進化はないように見えるが、なじみのあるシルエットが逆に、時を超えた特別な魅力を放っているらしい。


”人気者”の魚の化石


 化石に関心を示すのは、子ども、そして中高年と二つの層に分かれる傾向があるという。小学校低学年の頃に図鑑やテレビで見て想像を膨らませ、中学、高校と進むにつれて別のことに関心が移っていく。社会に出て年齢を重ねていくと、遠い日のあこがれがよみがえる。


4000円台で買える4億年前の三葉虫の化石


 「これ1万円で買えるんだ」――。金銭的にも多少の余裕が生じ、手が届くものも出てくるというわけだ。目の前に並ぶ化石の数々を真剣に見ている自分自身に気づき、「なるほど……その通りかも」と一人うなずいた。


「意外に安い」と言われることも多いそうだ



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