笑顔の遺影を撮りませんか? 九産大生による撮影会が地域で好評
学生に化粧を施され、生前遺影の撮影に臨む高齢者
記事 INDEX
- 短時間で納得の仕上げ
- 家族のため、大切な1枚
- 人のためにできること
写真を学ぶ学生たちが高齢者の生前遺影を制作するプロジェクトが、静かに注目されている。取り組んでいるのは、九州産業大学造形短期大学部(福岡市東区)で教壇に立つシム・ウヒョン准教授(53)と学生たちだ。
短時間で納得の仕上げ
「学外アートプロジェクト」の授業の一環として、福岡県内の公民館などで開いてきた無料撮影会は9年目に入った。年間10回ほどのペースで開催し、これまでに約7000人が利用した。希望者は後を絶たず、現在も4~5年待ちの状態が続いているという。
1月18日、福岡市南区の大池公民館。撮影会場に入ると、あちらこちらで世間話が交わされ、やわらかな笑顔が広がっていた。集まったのは、地元の高齢者およそ70人。この日を心待ちにしていた人も少なくない。1人あたり約30分という限られた時間の中で、撮影からプリントまでを行う。
流れるように作業が進む背景には、学生たちの明確な役割分担がある。入り口で受付を担う2人、化粧やアクセサリーを整える2人、撮影を行う3人。さらに、台紙の裏に名前をしたためる書道担当も控える。
中でも最多の4人を割いているのが「画像処理班」だ。「首のしわを目立たなくしてもらえたら」「髪のボリュームを出してほしい」。そんな一つ一つの要望に可能な限り応え、画像データを修整していく。
プリントシール機やスマートフォンに慣れ親しんできた世代にとって、写真の修整はお手のものだ。「駄目元でお願いしてみた」と話す高齢者も、しみが消え、表情が明るくなった自身の姿を目にして、「こんなふうに仕上がるなんて」と喜びの声を上げる。
家族のため、大切な1枚
高齢者の孤独死が社会問題となり、「最期は家族に迷惑をかけたくない」という声が聞かれるようになった頃、このプロジェクトは始まった。遺影は欠かせない存在でありながら、正面から向き合う人は少ない――。そんな現実があった。
あらかじめ遺影を用意することは、「縁起が悪い」「不謹慎」と受け止められることも。しかし、遺族が悲しみの中で、写真選びに苦労するケースは多い。遺影は、故人の生前の姿を映し出し、家族がこれから先も見つめ続ける大切な1枚でもある。
本人が納得した写真であれば、その人らしさはより自然に伝わる。生前遺影を撮影する写真館も増えてきたが、シム准教授によると、実際に準備している人は全体の5%程度にとどまるという。
人のためにできること
撮影から約30分後、学生が完成した写真を手に、山田サツキさん(81)のもとへ歩み寄った。「まあ! 何だか私じゃないみたい。10年は若くなった感じね」。満足そうな表情に、周囲から「あら、いいじゃない」と感嘆の声が上がる。「婚活には使わないようにね」。冗談交じりの一言で、公民館は笑いに包まれた。
「人物写真を学びたい」と、佐賀市から大学に通う1年の杉町瑠花さん(19)は「喜んでくれる笑顔に接すると、人のために自分ができることがあると実感できて、とてもうれしい」と話す。
写真を通して人と向き合い、今の社会を見つめてほしい――。シム准教授の願いは、シャッターの音とともに、撮影現場で静かに、そして確かに伝えられている。





































