
八女市での修業時代に制作した石灯籠の前で、「原点になった場所で個展を開けるのがうれしい」と語るサンドロさん
福岡県八女市で、伝統工芸品の石灯籠を制作しているドイツ人石工、サンドロ・モリッツさん(46)が、初の展示会「サンちゃん STONE EXPO」を同市本町の八女伝統工芸館で開いています。ドイツで石工となったサンドロさんは3年前、若手時代に修業を積んだ八女市に移住し、自身の工房を開きました。「たくさんの人に、ドイツと八女の石造文化に興味を持ってほしい」と来場を呼びかけています。9月28日まで。
石灯籠や手彫りの道具を展示
会場には、八女市での修業時代に手がけた2基の石灯籠を展示。ドイツで制作した数々の作品のほか、普段の活動をパネルや動画で紹介し、作業着や日常で使っているハンマーやノミなどの道具も並びます。ドイツ発祥のオクトーバーフェストが近いことから、母国の文化に触れてもらおうと、飲み物を提供する屋台も用意しました。
サンドロさんは旧・東ドイツの村に育ち、子どもの頃から石は身近な存在だったそうです。石工を目指して職業学校や工房で学び、資格を取った後は、教会など石造りの建築物を修理する仕事に従事していました。
そんな時、インターネットで目にした日本の石灯籠に魅せられ、2003年に研修生として来日。八女市で1年半にわたり、4人の職人に師事して技術を磨きました。修業中に出会って結婚した恵美さんとともに帰国したドイツでは、日本での経験も生かして作品に向き合い、優れた技能や技術を持つ職人に与えられるマイスターの資格も取りました。
その後、石工として活動しながら八女の職人らとの交流を続け、石灯籠を輸入・販売するビジネスも始めます。業績は好調でしたが、コロナ禍で日本との行き来が難しくなったことや、後継者不足などで八女の石工が減っていると聞いたことから、八女市への移住を決断しました。24年には、亡き師匠が残した工房を引き継ぎ、「サンちゃん石工房」を開業しました。
次の誰かにつなげるために…
「初めて八女に来て間もない頃、八女伝統工芸館で巨大な石灯籠や石の水車を作る職人の姿を見たことが原点です」。サンドロさんはこう振り返ります。ただ、八女の石工の数はこの20年間で4分の1に減り、現在活動しているのは約10人。一般の人が石工の技術を直接見ることのできる機会も限られているといいます。
会期中の9月27、28日には、サンドロさんが市のイメージキャラクター「みどりちゃん」を石で彫る実演があり、サンドロさんの指導による八女石のフラワーポット作り体験(2000円)もできます。
サンドロさんは、「江戸時代から続くという八女の石工が途絶えるのはもったいない。今度はこの場所から私が石造文化を発信し、また誰かにつなげることができればうれしい」と話しています。
■サンちゃん STONE EXPO
会 期:2025年9月20日(土)~28日(日)
時 間:9時~17時
場 所:八女伝統工芸館開放工房(福岡県八女市本町2-123-2)
入場料:無料
問い合わせ:八女伝統工芸館(0943-22-3131)