歴代最長の首相役 ニュースペーパー・福本ヒデさんが見届けた7年8か月

安倍前首相に扮する福本ヒデさん(右)

記事 INDEX

  • 僕の名前もシュレッダーに?
  • 布マスクを着けて上がるだけで
  • 北九州市は第二の故郷

 昨年9月に歴代最長の2822日で幕を下ろした安倍内閣。2012年12月の政権発足から7年8か月あまり、こちらも首相であり続けた人がいます。社会風刺コント集団「THE NEWSPAPER(ザ・ニュースペーパー)」の福本ヒデさん。演じ続けたからこそ、見えてきたこと。福本さんに聞きました。


福本ヒデさん

1971年、広島県神石高原町出身。九州国際大学に在学時、北九州市の市民劇団に入り演劇と出会う。大学卒業後のサラリーマン生活を経て、ニュースペーパーのメンバー入り。安倍前首相、麻生副総理兼財務相、石破茂・元幹事長らの役を演じる。


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僕の名前もシュレッダーに?

――歴代最長の首相"役"お疲れさまでした。

 これほど長期政権になるなんてね。安倍総理には多くの笑いのネタを提供してもらいました。在職中にお目にかかる機会もありました。あの「桜を見る会」にいたっては2度もご招待いただきましてね。

 招待された当初は親戚中から「すごいなぁ」とちやほやされたんですけど。僕の名前もシュレッダーにかけられちゃったんですかね。私、ニセモノですがなんとなく後ろめたさはあります。


安倍前首相を演じる福本さん(提供:TNPカンパニー)

――福本さんから見た安倍前首相の印象は?

 ニュースペーパーの営業先が首相公邸のクリスマスパーティーだったことがありました。30分くらいのコントを披露しましてね。総理は立ったまま、ずっと笑顔で見てくださいました。翌日、知らない番号から電話がかかってきて、出たら「昨日はありがとう。またなんかありましたらよろしく」って。安倍総理ご本人でした。きめ細かな気配りを感じました。


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直接会って感じた本人の気配り

――想像していた印象とは違った?

 そうですね。人間・安倍晋三を垣間見ることができました。総理を退かれたときには、この日ばかりはと勇気を出して「総理役をしていろいろな経験ができました。お体には気をつけてください」と短いメッセージを送りました。すぐに「ありがとう」と返信があって、変わらぬ気配りを感じました。

――ニュースペーパーでも、山本天心さん扮する菅総理に政権交代がありました。

 ニュースペーパーでも総理役は"センター"です。実力でつかみ取ったわけではないですが、その場を離れてみて素直にさみしさは感じます。総理の座を降り、知人に感謝のメッセージを送っていたときです。電車の中でしたが涙がこぼれていました。


山本さん(左)と福本さん


布マスク着けて上がるだけで拍手されます

――首相・安倍晋三はいかがでしたか?

 芸人としてはありがたいことに、本当に数多くのネタをくださいました。舞台に小さい布マスクを着けて上がるだけで拍手されますから。新型コロナウイルスには誰も怒れません。当然、政治家には国民の怒りの矛先が向かいやすい。

 身内の大臣ですら着けてないのに、総理だけが罰ゲームかのごとく何か月もあのマスクをしてね。260億円かけて国民に笑いと怒りのはけ口を提供してくれました。政策としては明らかな失敗ですがね。

――コロナ禍で国民のイライラが募っています。

 星野源さんの『うちで踊ろう』に乗っかったときもそうでした。周囲から言われて人気取りでやっているのが動画から伝わってきて、国民が安心してつっこめるネタを提供してくれました。本気で怒っている人もいましたが、僕はネタにもなるから「ドジだなぁ」って。


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