新「光の道」現る! 東峰村・岩屋神社の鳥居の先に沈む太陽

新たな名所に――。岩屋神社の鳥居の先にゆっくりと太陽が沈む

 福岡県東峰村に現れる「光の道」の存在がにわかに注目されている。光の道といえば、福津市の宮地嶽神社が広く知られているが、東峰村にある岩屋神社の一の鳥居でも、ひと味違う"神秘の天体ショー"が見られるという。

テレビ番組で脚光

 きっかけは、神社のそばに暮らす1人の女性だった。夕方に散歩していると、参道を覆うように茂る木々の隙間から、沈みゆく太陽の光が鳥居の中心へまっすぐ差し込む瞬間に出会った。


雪の上に鳥居の影が延びる


 偶然目にしたその光景は口コミで広がり、2025年には村の広報紙の表紙を飾った。さらに26年1月、FBS福岡放送の地域密着番組「地元検証バラエティ 福岡くん。」でも紹介され、一気に知名度が高まった。


岩屋神社の光の道が表紙を飾った「広報東峰」


 光が一直線に延びるのは、宮地嶽神社と同じく2月中旬と10月下旬のわずかな期間。スケールでは及ばないものの、神々しさでは決して引けを取らないようだ。2月9日、快晴の予報を頼りに現地を訪ねた。


全国的に知られる宮地嶽神社の光の道


 光の道の出現は、16時30分前後のわずか5分ほど。その時刻を待ちながら境内を散策する。英彦山修験道ゆかりの地というだけあって、随所に歴史の気配が漂う。岩屋神社は、大分県との境界に近い深山に鎮座し、古墳時代の547年に空から降ってきたとされる「宝珠石」をまつっている。国の重要文化財に指定されている本殿は、巨大な岩の割れ目をそのまま利用した全国でも珍しい造りだ。


切り立つ大岩のくぼみを利用して造られた岩屋神社


 見上げると、険しい岩場に造られた熊野神社があった。中国・敦煌(とんこう)の石窟(せっくつ)寺院を思わせる景観。天狗が蹴って開けた穴に創建された――。そんな伝説も残る。


岩窟の中にひっそりと立つ熊野神社


 大きな杉が林立する境内。耳を澄ますと、雪解けのしずくがポタポタと落ちる音が聞こえる。足元に目を向けると、白い残雪をキャンバスに、落ち葉や小枝が冬の模様を描いているようだった。


白い残雪をキャンバスに、落ち葉や小枝が描く冬の模様


ゆずりあいの心で


 日が少しずつ傾き始めた。鳥居へ戻ると、"本番"の1時間前に6人だった人影は、40人以上に膨れあがっていた。撮影のベストポジションは、畳1枚ほどの狭いエリア。「こんなに人が来るとは思わなかった」「ちゃんと撮れるかしら……」と不安の声が漏れる。


16時頃になると、光の道をひと目見ようと多くの人が集まった


 そこに役場の職員たちが駆けつけた。つい最近まで期間中でも1、2人しか訪れなかったという静かな神社。職員は集まったカメラマンらと相談しながら三つのグループをつくり、1組40秒ずつの交代で撮影する段取りを整えた。


「ゆずりあい」を呼びかける貼り紙も今冬から登場


 10分前になると、どこからか「一度並んでみましょう」という声が上がった。最前列はしゃがんで5人、2列目は中腰、3列目は立った姿勢で――。現場に、ちょっとした緊迫感が漂う。


光の道が出現する10分前には撮影の"リハーサル"も行われた


 いよいよ迎えた"その時"。沈黙を破るように、森の片隅でシャッター音が響く。しばらくすると「では次のグループに交代してください」と村職員が促す。"リハーサル"が功を奏し、第2グループ、そして第3グループへとスムーズに入れ替われた。


森の静寂の中にシャッター音が響いた


 カメラ仲間に勧められ、北九州市八幡西区から訪れた田中恵美子さん(66)は、今冬2度目の挑戦で神秘の光景にようやく出会えたという。「人が多くて緊張したけれど、リベンジできてよかった。秋もまた来たいですね」と笑顔を見せた。


90歳を超す高齢者も訪れてカメラを構えた


 スマートフォンで、一眼レフカメラで、しばしレンズを下ろして自らの目でしっかりと――。それぞれの思いで、「光の道」と静かに向き合う。太陽が木立に隠れる頃には、少し張り詰めていた現場の空気も、すっかり和らいでいた。「今度の土日はもっと来るばい」「10月には露店が出るかもね」。軽口が飛び交い、笑い声が森に広がった。


太陽の光がスポットライトのように撮影者を照らしていた


 役場によると、今季の光の道は天候に恵まれれば、2月15日頃まで見られそうとのことだ。




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