「母の味」を子どもたちに残したい 難病と闘う女性が料理本を出版
出版を喜ぶはらださん(右端)とママ友たち
記事 INDEX
- もしもキッチンに立てたなら
- ママ友の協力でレシピを記録
- 誰かの人生に光が差したら…
子どもたちに母の味を残したい――。全身の筋肉が衰える進行性の難病「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)」と闘う福岡市の女性がレシピとエッセーをつづった本「もしもキッチンに立てたなら」が3月、全国の書店で発売された。体が自由に動かなくなる中、ママ友たちの手を借りて完成させた。
もしもキッチンに立てたなら
「おいしそう!」「すごいね」
3月中旬、はらだまさこさん(45)宅に集まったママ友10人が完成したばかりの本を開くと、次々と笑みを浮かべた。はらださんは「(みんな)かけがえのない存在」と涙した。
長男(13)と長女(4)の2児の母。同市中央区で喫茶店「サウンズフード サウンズグッド」を営み、「台所が居場所」と言うほど、料理を生きがいとしてきた。砂糖は使わず、みりんやハチミツで甘みを出すなどこだわり、自ら編み出したレシピの料理を家族にも振る舞ってきた。
2023年6月、ALSと診断された。鍋を持ち上げることが次第に難しくなり、料理を諦めざるを得なくなった。「生きる理由をどこに置けばいいのか」。悩んだ末に、頭の中にあるレシピをメモに書き起こし、子どもたちに残すことを思いついた。「困難な中にある人の希望になれたら」と出版化も目指した。
ママ友の協力でレシピを記録
その思いを知ったママ友たち10人以上が、はらださんの手の代わりとなった。25年7月から育児や家事の合間に月2回ほど店に集まり、メモを基に実際に調理。はらださんが味見をしながら、みんなで材料や分量、手順を記録してきた。ウェブで一部を公開したところ、「徳間書店」(東京)から出版化の声がかかった。
本で紹介するのは、食卓で奪い合いになるほどの人気で、いつか長女に作ってほしいと願う「ハーブな肉詰めピーマン」や、自家製ケチャップを使った長男の大好物「お肉屋のオムライス」など17品。
長男同士が幼稚園の同級生という山下杏子さん(44)は、「まさこさんのレシピには食べる人への思い、家族への愛が詰まっている」と話す。
誰かの人生に光が差したら…
スマートフォンでの文字入力や言葉を発することが難しくなったはらださんのため、エッセー部分は、福岡市で台所用品の販売店を営む田中文さんが執筆に協力した。質問を重ね、聞き取った内容をまとめた。
はらださんが店を開いた18年頃、客として訪れた田中さんはおいしさに感動。はらださんを料理の講師として招くなど、交流を続けてきた。
はらださんは病気の進行で、子どもと手をつないで歩くことや、運動服を洗濯することもできなくなった。エッセーでは、「海の見えるキッチンで料理教室を開きたい」という夢を明かし、「どんな姿になっても子どもたちを深く愛し、心から大切に思い続けている気持ちは変わらない」とつづっている。
田中さんは「子どもにご飯を作ってあげられるという、今この瞬間の『当たり前』は、とても尊い時間だと知ってほしい」と語る。はらださんは「この本によって、誰かの人生に光が差してくれたらうれしい」と話している。
四六判176ページ、税込み1870円。







