もう”厄介者”とは言わせない! 「竹の意外な活用法」

「竹あかり」のステージで竹チェロ(右)や竹バイオリン(左)を奏でる演奏家たち

記事 INDEX

  • 透明な音色で魅了
  • 清涼感かおる線香
  • 「困った」から発案

 放置竹林が全国的な問題となり、厄介者扱いされがちな「竹」。意外な方法で活用する取り組みも広がっている。

透明な音色で魅了

 11月上旬、北九州市で開かれたイベント「小倉城 竹あかり」の特設ステージに、透明な音色が響き渡った。演奏する「竹凛共振(ちくりんきょうしん) 竹の楽団」が手にする細長い弦楽器は、竹製のバイオリンとチェロ。オリジナル曲「BAMBOO FOREST」などを情感たっぷりに奏で、鑑賞した福岡市の末野晶子さん(58)は「竹の楽器の音を聴くのは初めて。素晴らしいですね」と感動していた。


 竹の楽器を作っているのは北九州市の元建築デザイナー田中昇三さん(68)。約20年前に竹林整備活動に参加したことを契機に竹の新たな活用法を考える中で発案し、3年がかりでプロの演奏にも堪える楽器を完成させた。

 これまでにギター、ウクレレ、二胡(にこ)なども手掛け、現在はチェロを中心に制作している。竹チェロは7、8万円程度でネット販売し、同市のふるさと納税の返礼品に採用されているほか、田中さんが主宰する「竹凛共振プロジェクト」では楽器を作るワークショップを開催。田中さんは「音楽を通じて竹の活用を広めたい」と意気込む。


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清涼感かおる線香

 竹は繁殖力が強く、放置すると森林を侵食し、土砂災害を引き起こす恐れがある。北九州市では竹林面積の9割を放置竹林が占めるとされ、「竹あかり」のイベントはこうした「竹害」の啓発につなげようと2019年から始まった。イベントで小倉城周辺を照らす竹灯籠は、市内で伐採された竹を材料にしている。

 この竹灯籠をさらに再利用しようと、同市小倉北区の野上神仏具店の専務野上哲平さん(35)が開発したのが線香「小倉竹の香(こ)」だ。竹灯籠を粉末にして線香に加工。清涼感のある竹の香りで、容器にも竹筒を採用した。


竹を使った線香「小倉竹の香」


 今夏に初めて販売した120個は約1か月で完売し、今年の竹灯籠を使った線香(20グラム、2000円)は来年4月頃に販売を予定している。野上さんは「線香の香りから竹の価値を見いだしてもらえたら」と話す。


「困った」から発案

 福岡県内では、北九州市以外でもユニークな竹商品が登場している。

 タケノコの生産量日本一を誇る八女市では、後継者不足や輸入タケノコの影響などで放置竹林が増加。そこで大野城市の製薬会社「三省製薬」が、八女市産の竹を使った化粧品シリーズ「yameKAGUYA」を九州大や県などとの共同プロジェクトで開発した。


竹の美白成分エキスを配合した「yameKAGUYA」

 同大の研究で竹の表皮にはメラニンの生成を抑制する美白成分が含まれていることが判明。化粧品には、表皮から抽出した美白エキスを配合した。洗顔料(1100円)、ボディーローション(1650円)など5種類あり、百貨店や同社のサイトなどで販売している。竹林整備に役立ててもらうため、売り上げの一部を八女市に寄付している。

 宮若市の食品会社「アルファー」は、竹筒を容器にしたちまきを「竹千寿」の屋号で販売している。竹の香りや殺菌効果を生かしたちまきで、25年ほど前、創業者の池田秋美会長(72)が地域住民から受けた「竹林が広がり困っている」との相談をきっかけに商品化した。


竹を容器にしたちまきを紹介する池田会長


 現在は「竹ちまき」(702円)、「鶏ごぼうおこわ」(同)など6種類を販売しており、安部和美社長(42)は「見た目にインパクトがあり、贈り物としても喜ばれます」と話す。


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