素材はスクラップ鉄 母里聖徳さん作品展を田川で開催中

 スクラップ鉄を素材にした現代美術家・母里聖徳(ぼりきよのり)さん(福岡県嘉麻市)の作品展「鉄を生ける」が、福岡県田川市の交流施設「いいかねパレット」で開かれている。ゆがみやひずみがある「役に立たないが、兵器にはならない鉄」を追究し、現代社会への問題提起として表現した75点を展示、販売している。

 母里さんは1987年と93年に北九州市で開かれた「国際鉄鋼彫刻シンポジウム」や、世界的な美術家の川俣正さんが96年~2006年に田川市で展開した「コールマイン(炭鉱)田川プロジェクト」などに携わってきた。アートを「近代の工業力あっての存在」と定義づけ、工業都市や旧産炭地からの発信にこだわって活動している。


作品を前にする母里さん


 生け花のように展示した作品には、ウクライナや中東での戦火に対するメッセージを込めている。若い頃、3隻の駆逐艦が防波堤として再利用されている北九州市若松区の護岸で、さびた破片が散らばっているのを目にしたのが創作の原点という。「殺りくの道具を経て人道目的で使われ、最後に酸化した自然な状態で安定した姿に、心を動かされた」。人間の使い勝手に左右されない「鉄」を通じて、戦争のない社会への思いを伝えていきたいという。


 作品展は来年1月14日まで(12月27日~1月4日と水曜休館)。入場無料。


advertisement

この記事をシェアする