伝統に新たな価値を 博多織や久留米絣が福岡の焼酎とコラボ
福岡を代表する伝統工芸品「博多織」や「久留米絣(かすり)」をモチーフにデザインしたオリジナルボトルの「博多焼酎」が11月27日~12月3日、福岡市中央区の大丸福岡天神店で販売されます。伝統工芸の魅力を伝えるプロジェクトの一環で、収益の一部は博多織と久留米絣の事業者に還元されます。
旅行とクレカの大手が協業
コラボは、旅行大手・JTBとクレジットカード大手・JCBが共同出資する「J&J事業創造」(東京)が企画しました。同社は3年ほど前から、需要減少や担い手不足といった課題を抱える各地の伝統工芸を支える取り組みをスタート。地域で受け継がれてきた「伝統」と現代の「アート」「テクノロジー」を掛け合わせ、新たな"価値”をもつ商品を開発・提案するプロジェクト「Bank of Craft」を展開しています。
今回のプロジェクトでは、福岡県の観光土産品に指定されている「博多焼酎」に注目し、現代風にアレンジした博多織、久留米絣と組み合わせることで、地域の人やインバウンドを含む旅行者の目を引く商品を開発できないかと考えました。
趣旨に賛同したゑびす酒造(朝倉市)、紅乙女酒造(久留米市)、天盃(筑前町)、西吉田酒造(筑後市)が企画に参加。4蔵元・6銘柄のコラボ商品が誕生しました。それぞれのボトルのラベルは、仏具を図案化した「献上柄」で知られる博多織、幾何学模様などが施された久留米絣の特徴を生かしてデザインされています。
販売会場は大丸福岡天神店の本館1階にある「アンテナプラス」です。各銘柄30本限定で、博多織や久留米絣の生地で仕立てたラッピング用の織物(6600~1万1000円)も購入できます。
現代の技術とアイデアで!
デザインは、福岡や東京、海外で活躍する書家・小山翔風氏、神奈川で活動するクリエイター・加嶋雅彦氏ら4人に依頼したほか、みずほフィナンシャルグループ(FG)が開発した生成AI(人工知能)技術を用いたテキスタイルも採用しました。
<博多織×AI×デザイナー>
みずほFGによる生成AIに博多織の模様を学習させ、生み出されたテキスタイルをラベルに配置したボトル。テキスタイルをもとに、加嶋氏がデザインを手がけました。
西吉田酒造「初潮」
●セット販売1万3200円
●焼酎のみ4400円
●織物ラッピングのみ1万1000円
<博多織×書家>
小山氏が、織物とそこにひもづく歴史・文化・生活を「つながり」として表現。博多織の生地に書をデザインしました。
ゑびす酒造「芳云ゑびす蔵」
●セット販売1万3200円
●焼酎のみ4400円
●織物ラッピングのみ1万1000円
<久留米絣×アーティスト>
久留米絣を絞る棒と糸、染め液の入った甕(かめ)などをモチーフに、アーティスト・WOK22氏が手がけました。染めるのに重要な水をイラストで表現しています。
天盃「クラフトマン多田スパニッシュオレンジ」
●セット販売8800円
●焼酎のみ4400円
●織物ラッピングのみ6600円
<久留米絣×アーティスト>
アーティスト・坂巻善徳a.k.a sense氏が、久留米絣の歴史で中心的な役割を果たしてきた女性にスポットを当て、その創造力や美しさをデザインに落とし込みました。
紅乙女酒造「紅乙女樽FRENCH OAK」
●セット販売8800円
●焼酎のみ4400円
●織物ラッピングのみ6600円
このほかにも、梅の花をモチーフに、博多織と久留米絣の布地を合わせたラベルなどの焼酎が販売されます。
担当者は「この取り組みが工芸品の産地の新たな収益となって、伝統を守り続ける事業者の手助けになればうれしい」と話しています。