小麦アレルギーの弟と食べたいな 「一緒にラーメン」夢かなう!

上田寛二君(左)と並んでラーメンを味わう兄の喜一君(北九州市八幡西区の「一蘭」引野店で)

 兄のお気に入りの店に行き、兄弟並んでラーメンを味わいたい――。北九州市八幡西区の小学5年上田喜一君(11)と弟で小学2年の寛二君(8)が1月、その夢をかなえた。小麦アレルギーを抱える寛二君は、ラーメンを食べたことがなかった。兄が書いた作文が新聞に掲載され、兄弟の思いを知った福岡市の人気ラーメンチェーンが、米粉で麺を打った特別な1杯を2人に振る舞った。

「ママ、おいしい!」

 1月22日夜、喜一君と寛二君が、八幡西区の「一蘭」引野店ののれんを初めて2人でくぐった。喜一君は同店を祖父母らと多い時には月4、5回訪れる常連だ。

 「お待たせいたしました」。寛二君の前に湯気の立つ丼が置かれた。両親や兄から顔をのぞき込まれるなか、少し緊張した表情で豚骨スープと麺を口にすると、「ママ、おいしい!」と声を弾ませた。弟がうれしがる様子に、喜一君も親指を立てて笑顔を見せた。

 喜一君は「夢がかない、今までで一番おいしいラーメンだった」と感激し、寛二君も「一緒に食べられて楽しかったし、うれしかった」と心を躍らせた。

弟の日記を目にして

 寛二君は小麦や卵などのアレルギーがあり、食べると嘔吐(おうと)や唇の腫れなどの症状が出る。2歳から通院し、原因となる物質を徐々に摂取して慣れさせ、アレルギーの克服を目指している。

 2025年6月、喜一君は弟から日記を見せられた。「はやくこむぎをたべられるようになってお兄ちゃんとおにいちゃんが大すきなラーメンやさんにいきたいです」。そうつづられていた。


寛二君が書いた日記


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 弟とはゲームの取り合いや外食時の店選びなど、ささいなことでよくけんかをする。だが、自身も幼い頃に卵アレルギーに悩まされて治療を受けた経験があり、心の中で応援していた。弟がアレルギーの克服を目指す理由を知り、「一緒にラーメンを食べたい」との気持ちがより強くなった。

 喜一君はこの出来事を400字詰めの原稿用紙3枚にまとめ、25年9月、「こども作文コンクール」(読売新聞社主催、一般財団法人あんしん財団共催)に応募した。題は、替え玉を頼んだ時に店で鳴るチャルメラ音にちなんで、「弟と聞きたい。あの音を。」とし、弟とラーメンを食べられる日が来るのを「今から楽しみで仕方ない」とつづった。

上田喜一君の作文(一部抜粋)

 「チャララーララチャラララララー」
 ぼくの大好物はラーメンだ。そのお店のラーメンは美味(おい)しすぎて、いつも替え玉をしてしまう。
 でも、ぼくはまだ弟とそのラーメン屋さんに行ったことがない。弟には、小麦と卵、えび、かに、くるみなどたくさんのアレルギーがある。ラーメンが食べられないのだ。
 弟は、病院でどのくらい小麦が食べられるのか検査をしている。家でも、うどんの量を少しずつ増やして症状が出ないか調べている。
 弟とは、十分に一回はケンカをする。そんな弟が、宿題で日記を書いていた。「これ、読んでみて」と恥ずかしそうに渡してきた。読んだしゅん間、涙があふれ出た。「早く小麦を食べられるようになって、お兄ちゃんとお兄ちゃんが大好きなラーメン屋さんに行きたいです」と書かれていたのだ。
 アレルギー症状が出るかもしれないと思いながら食べる検査はどれほど怖いだろう。みんなと同じ物を食べられなくてどれほど我慢してきたのだろう。「行こう。絶対に一緒に行こう」と弟を抱きしめながら言った。
 いつもと同じラーメン屋。「チャララーララチャラララララー」
 一緒に聞きたかったあの音が鳴りひびく。ぼくの夢が叶(かな)うしゅん間だ。初めて一緒にすするラーメンはどんな味がするのだろう。弟はどんな顔をして食べるのだろう。涙で少しだけしょっぱい味になるかもしれない。それでも、今まで食べたラーメンの中で一番美味しく感じるにちがいない。その日が来ることが今から楽しみで仕方ない。

一蘭が特製麺を開発

 作品は小学5~6年生の部で全国9309点の中から、最優秀の大賞に選ばれ、25年11月の読売新聞に全文が掲載された。知人から連絡を受けた一蘭の吉冨学社長(61)が自社のことではないかと思い、小学校に確認した。吉冨社長は兄弟の願いをかなえようと、研究を進めていた小麦を一切使わないグルテンフリー麺の開発を急いだ。

 麺には米粉を使用。麺が切れやすい、スープに合わないなどの課題も見つかり、原料の配合などを変えて試作を繰り返した。1か月ほどで仕上がり、喜一君と寛二君のほか、両親や妹の千蓉(ちよ)ちゃん(4)、祖父母ら計9人を店に招待した。


特別な1杯で兄弟の夢がかなった

 吉冨社長は「兄弟の絆を再確認できるような思い出の味として、少しでもお役に立てたのであれば、これほどうれしいことはない」と喜ぶ。一蘭によると、グルテンフリー麺の商品化は未定という。

 喜一君は「高校生になったら一蘭で働き、僕もお客さんを喜ばせたい」と新たな夢を抱く。寛二君も「次は、お兄ちゃんと同じ小麦が入った麺の替え玉をして『チャラララ』を聞きたい」と話した。


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