視覚障害者の視点から防災について考えてもらおうと、視覚障害者などでつくる市民団体「心眼ハート♡あいず」が9月21日、福岡県の久留米市総合福祉センターで10回目となる防災講座「備えあいFESTA」を開く。災害支援にかかわったことなどがきっかけで講座を始めたという代表の長谷部寿子さんは「『目が見えないからできない』ではなく、見えない人や見えにくい人でもできることを知ってもらい、社会に参加していく一助にしたい」と話す。
長谷部さんは久留米市出身で、佐賀県みやき町在住。生まれてすぐに未熟児網膜症と診断され、手術を受けた。右目は全く見えず、左目だけがわずかに見える。短大卒業後、会社員として働きながら、視覚障害者を支援するボランティア活動も続けてきた。
同団体は2015年に長谷部さんが中心となって設立し、2025年1月に10周年を迎えた。現在の会員は49人。視覚障害に対する理解を深めてもらおうと、障害の有無にかかわらず交流の場を設けて活動している。
長谷部さんは、記録的な大雨で被害に遭った久留米市や福岡県大牟田市などの避難所で視覚障害者を支援するなどしてきた。この際、視覚障害者の自主防災には知識の習得だけでなく、日頃から地域とつながることが大切だと感じたという。そこで、21年から障害の有無にかかわらず、体験や学びを一緒に行える「備えあいFESTA」として防災講座を開催。コロナ禍ではオンライン中継も活用し、毎年2回のペースで開いてきた。
21日の講座は午前11時~午後3時に開催。当日は、目からの情報が入りにくい視覚障害者のために、雨の降る音量で水害の危険性を感じたり、災害時に活用できるグッズを紹介したりする。また、簡易テントの中に入って広さを確認したり、非常用トイレに水を入れて袋の縛り方などを確認したりする体験もある。非常食の調理と試食も予定する。
つながり大切
長谷部さんは「視覚障害者は困りごとや助けてほしいことが気付かれにくく、不自由さや孤立感を抱く人もいる。講座を通して、視覚障害者にもできることを知ってほしい。障害の有無にかかわらず、人と人が支え合い、もしもの時に声をかけ合えるつながりができたらうれしい」と話す。
防災講座は定員30人。参加費1000円(昼食体験込み)。9月17日午後5時までに専用フォームから申し込む。問い合わせは長谷部さん(090-3987-3327)へ。