「宙ーSORAー」 大濠公園の日本庭園で光のイベント開催中

日本庭園の池に浮かぶ巨大な月のオブジェ
記事 INDEX
- 四季折々の美を体感
- デジタルで異世界に
- ホタル舞う森を歩く
市民の憩いの場になっている福岡市中央区の大濠公園。その南エリアにある日本庭園で日没後、幻想的な光のイベント「宙―SORA―」が9月末まで開かれている。直径5メートルの月のオブジェなど趣向を凝らした光の演出が、訪れた人を魅了している。
四季折々の美を体感
日本庭園は、大濠公園の開園50年に合わせて1984年に整備された。敷地面積は約1.2ヘクタール。白壁の築地塀と樹林に囲まれ、都市部にありながら四季折々の美しさを体感できるスポットだ。
昼間は、「上の池」と呼ばれる南側の大きな池で、黄色やオレンジ色のコイが泳いでいるのが見られる。木々の緑を映す水面をよく見ると、アメンボが軽やかに滑り、いくつもの円を描いていた。
上の池では、人工の霧をおよそ10分おきに噴射して、雲海の中にいるかのような情景をつくりだす企画「大濠霧幻(むげん)」が行われている。英語や中国語、韓国語も飛び交う庭園を訪れる人は年々増え、2024年度は過去最高の13万8000人以上を数えた。その6割は海外からの観光客だという。
デジタルで異世界に
庭園はいったん18時に閉まるが、「宙」の期間中は19時30分(9月6日以降は19時)に再開する。日没後に足を運ぶと、日本の伝統美を体現した庭園がプロジェクションマッピングなどのデジタル技術で彩られ、日中とはまったく異なる世界が広がっていた。
夏の夜の"特別な時間"は入り口から始まる。西門では、巫女(みこ)に扮(ふん)した女性が鈴を鳴らして迎えてくれた。来場者を清める演出だという。門をくぐると、大濠公園の池を借景にして、鮮やかな光に彩られた枯山水庭が目に飛び込んできた。
繊細な曲線が美しい昼間の白砂の雰囲気は一変。光の演出によって、白砂をキャンバスに、花びらが舞う川面にコイが優雅に泳ぐ幻想的な光景に様変わりしていた。
順路を進み、上の池へ。昼間はセミの声が支配していた庭園は、透明感のある音楽と、ミストが噴射される音がかすかに聞こえる空間に。庭園の森や池をスクリーンにして繰り広げられる壮大な光のショーに、親子連れやカップルたちが見入っていた。
池の奥では、水面に浮かぶ月のオブジェが夜風を受けて揺れている。"小宇宙"のような不思議な光景。池の周囲には、この月をバックに写真を撮ろうと、10人以上が列をなしていた。順番が回ってくると、次の人にスマートフォンを渡し、国籍に関係なくみんなで撮り合う様子がほほえましかった。
ホタル舞う森を歩く
順路の後半――。普段は立ち入ることができない森の中に、思いもしない幻想的な光景があった。木々の間の細い小道に、何万という数のホタルが飛び交っているような、奥行きある不思議な空間。しばし時間を忘れて立ちすくんだ。
月のオブジェの写真をインスタグラムで目にして、恋人と訪れたという福岡県久留米市の男子大学生(22)は、「すごくきれい。とくにホタルの森の散策は、満天の星の中を歩いているみたいな感覚でした」と興奮気味に話してくれた。
光のイベントは22時(入場は21時30分)まで。チケット(当日券)は、大人2300円、中高生1800円、小学生1400円で、未就学児は無料。
庭園の隣では、2029年度の開館を目指す新しい福岡県立美術館の本格工事が間もなく始まる。完成後は、美術館の窓からも庭園が望めるという。昼と夜、伝統と最新技術のコントラストで、幻想的な表情を見せる日本庭園。美術館から俯瞰(ふかん)する光景もまた、海外からの訪問者らに日本美の魅力を印象づけることになりそうだ。